昨日こちらの記事に書いた通り、人民新聞裁判が終結し、裁判を取り消した報告会が行われた。とりあえず公表された和解協定書と、自己批判文を掲載する。

和解協定書
 ㈱人民新聞(以下、「甲」という)と、きょうとユニオン(以下、「乙」という)ならびに村上組合員(以下、「丙」という)の3者は、甲における労働問題の諸点について、下記のとおり合意したことを確認し、その誠意ある履行を確約して和解協定書を締結する。
①甲は11月25日の話し合いを発端とするハラスメント及び労働環境に関する紛争について自己批判文を作成し、5月25日までに人民新聞購読者全員に郵送する。
②甲は2022年1月5日以降の話し合いの中で約束したハラスメント研修を継続する。
③甲は本件解決にあたって解決金として150万円を乙に5月11日までに支払う。
④丙は上記①の郵送と③の支払いを確認次第すみやかに、大阪地方裁判所で係争中の訴訟を取り下げる。
⑤本協定成立後は、甲と乙、丙は、互いに誹謗中傷をしない。
 双方の関係者・支援者に対しても、和解の趣旨を誠実に説明し理解を求める。
 自己批判文の公開は本件紛争の解決について報告する目的に限る。
⑥甲と乙、丙は、本協定に定める事項の履行をもって、甲と乙、丙との間には、他に何らの債権債務のないことを相互に確認する。
 上記合意の成立の証として3者は以下に捺印した。本合意書は原本3通を作成し、3者が各々その1通を保持する。
 2023年5月11日
 (甲) ㈱人民新聞社 山田 洋一
            津林 邦夫  
            園 良太
 (乙) きょうとユニオン 執行委員長 笠井 弘子
 (丙)  同   組合員 村上 薫


自己批判文 ㈱人民新聞社 山田洋一 津林邦夫 園良太 2023年5月11日
 私たち人民新聞の編集部3名は、2021年11月25日に社員であった村上薫氏と新聞社事務所で約1時間の話し合いを行いました。そこで村上さんに対して、休業中の副業(メンズエステ)へ復帰しないことと、退職を求めました。「経営者だけでなく従業員も逮捕弾圧される事例の増加」と、「逮捕弾圧とその影響を防ぐこと」が主な理由でした。
 しかし、この話し合いやその後のやり取りの末に、私たちは村上さんから2022年3月に大阪地裁に提訴されました。その上で、村上さんが加入した労働組合「きょうとユニオン」との団体交渉も始まりました。
 11月25日の「話し合い」とその後の言動が、村上さんに大きな苦痛と損害を与えたことを認め、以下の通り表明します。
 11月25日、私たち3人は、勤務時間外の村上さんを職場に呼び出し、急遽話し合いを持ちました。その話し合いの場で、私たちは村上さんに弾圧の危険性と各方面への影響を主な理由として、メンズエステに復帰しないことと、退職を提案しました。村上さんの職業選択の自由の否定、そしてメンズエステについての偏見に基づいた介入は村上さんの尊厳を深く傷つけました。
 この話し合いは、職場の上司かつ年長の男性=明らかに優位な立場にある私たち3人が村上さんを取り囲んでの話し合いとなり、これは力関係が不平等な中で行われた明白なパワーハラスメントでした。
 そのような一方的な話し合いを行った背景には、1 人民新聞が、賃金の発生する労働と個人の政治的な活動とを混同し、境界を曖昧にしていたこと。2 それによって、活動家なのだからという「大義名分」を持って労働者の基本的権利を尊重せず、長時間労働や過重労働の常態化をしていたこと。3 労働者個々人の生活や価値観への介入をハラスメントだと認識していなかったこと。4 女性差別に関しての認識が不十分であったこと。5 人民新聞が度々指摘されてきた男性中心主義を改められなかったこと。
 このような背景が、11月25日の「話し合い」をもたらしたと言えます。
 2022年1月5日、村上さんとその支援者からメンズエステへの復帰問題の話し合いが申し込まれ、1月8日から3月4日まで5回行われました。第1回では、村上さんから3点の要求が出され、私たちは3回目に書面での回答と謝罪文を提示しました。話し合いはその後も続き、5回目に私たちから見た事実認識の提示と反論を行いました。しかし、そのような過程で人民新聞側が村上さんを精神的に追い詰め、話し合いが継続できないような状況となったために、訴訟へと発展してしまいました。
 話し合いにおける私たちの対応を改めて自省すると、組織や個人の自己防衛意識が先に立ち、何が問題だったのか、深く考えることができないまま、話し合いが進んでしまったと思います。
 また話し合いの中で人民新聞社側が提出した経緯の認識についての書面は、村上さんのプライバシーに関わる内容であり、村上さんの精神的苦痛を大きくさせてしまいました。
 私たちは、以上の内容を自己批判します。
 また、再発防止として村上さんから要求されていた、パワーハラスメント加害者研修の受講はすでに昨年春から開始しており、今後も継続するつもりです。
 そして村上さんが団体交渉で求めている賠償に応じるとともに、現在の有限責任事業組合(注)で同じ過ちを繰り返さないよう、編集部内での対等で開かれた関係性や、無理や矛盾のない仕事のやり方を目指して、常に自己チェックと話し合いを行っていきます。

以上

(注)株式会社人民新聞は2022年4月、「有限責任事業組合」に会社形態を変更しました。