日本で「台湾有事」があおられ、辺野古新基地建設やミサイル部隊配備が進められる中、台湾では総統選挙が行われ、民進党・頼清徳氏が当選した。NHKニュース
台湾総統選 民進党・頼清徳氏が当選 立法院は過半数維持できず
13日に投票が行われた台湾の総統選挙で、与党・民進党の頼清徳氏が550万票を超える票を獲得し、野党の2人の候補者を破って当選しました。台湾で1996年に総統の直接選挙が始まってから初めて、同じ政党が3期続けて政権を担うことになります。
台湾総統選 民進党・頼清徳氏が当選 立法院は過半数維持できず
13日に投票が行われた台湾の総統選挙で、与党・民進党の頼清徳氏が550万票を超える票を獲得し、野党の2人の候補者を破って当選しました。台湾で1996年に総統の直接選挙が始まってから初めて、同じ政党が3期続けて政権を担うことになります。
一方、同時に行われた議会・立法院の選挙では民進党が過半数を維持できず、5月に就任する予定の頼氏は難しい政権運営を強いられることになりそうです。(以下、略)
日本国内では「台湾独立」志向の高い民進党が勝てば、中国からの圧力が強まり「台湾危機」に近づくのでは?といった単純な見方もあるようだが、そう単純なものでもないだろう…基本、台湾は「現状維持」である。
2023年6月の、台湾国立政治大学選挙研究センター「統一か独立か」の世論調査によれば、台湾が大陸中国と
できりかぎり早く統一する…1.6%
現状を維持した後、統一に向かう…5.8%
永遠に現状を維持する…32.1%
現状を維持した後、統一か独立かを決定する…28.6%
できる限り早く独立する…4.5%
現状を維持した後、独立に向かう…21.4%
であり、統一 < 独立 < 現状維持 といった世論の構成であり、「統一したい」という意見は少なく、基本は現状維持ということがわかる。なお「天然独」という言葉があって、1990年代以降の生まれの若年層(40歳未満)は「台湾は(すでに)独立した国家である」という認識が強く、改めて独立を宣言するといったことには関心がないので、こう呼ばれている。こういった人も「現状維持」派となる。ただこのような人たちも、台湾人民の主体性を侵す介入や侵略については強く抵抗するのだそうな。
ちなみに、同センターの同時期における、台湾住民の自己認識の調査では
自分は「台湾人」…62.8%(1992年調査では、17.6%)
「中国人」…2.5%(25.5%)
「どちらでもある」…30.5%(46.4%)
ということだ。
世界秩序の中では「一つの中国」原則があって「台湾は中国の一部」ということになっており、国連の場では「中国」が代表権を持ち、中国と台湾の二国と同時に国交を結ぶことは不可能でもある。米中間、日中韓の国交の原則のそうであるが、対外的にも内部的にも、台湾は「天然独」であるといえよう。
で、今回台湾の総統になった頼清徳氏が引き継いだ、民進党・蔡英文政権はどんなことを成し遂げてきたのか?
まず「脱原発」…ドイツの事例がよく取り上げられるが、民進党の綱領には「原発の新設に反対し、一定期間内に既存原発も閉鎖する」という条項がある。そして2016年10月20日、電気事業法改正案を閣議決定、段階的な電力自由化と「2025年に原発ゼロ」政策をとった。6基ある原発は40年の廃止期限が2025年5月に迫っている。台湾北部に建設中の第4原発は9割がた完成しているものの、事故により
中断したままである。もっとも2018年に住民投票が行われ、2025年の原発全廃は法律の条文から外されたが、廃止方針そのものは翻っていない。しかし原発政策も「住民投票」という究極の民主主義によって意思決定がなされていることに注目しよう。
つづいて「原住民政策」…「先住民政策」と書くべきだが、台湾では「原住民」と表記する…台湾には、漢民族が移住・定住する前から住んでいる少数民族が存在する。2016年8月、国民党・外来政権時代の原住民に対する差別を与えてきたことへ、政府を代表しての公式謝罪と権利回復を図る委員会の設置が行われた。立法院の議席や、教育・就職に原住民枠が設けられている。
北海道のアイヌ、琉球民族に対し、先住民としての権利や国会等での特別枠も設けず、盗んだ遺骨さえ返さない「帝国大学」のあるニッポンとは、大きな違いである。
また2018年「国家言語発展法」を制定したが、この中で「国家言語」とは「台湾における各固有のエスニック・グループが使用する自然言語及び台湾手話」と定義し、自然言語とは漢語系3言語…福佬人、客家人、外省人の各使用言語…と原住民16族の各言語を示している。すなわち、人口2300万人の台湾は言語の多様性を認めているのである。なお、手話を公用語と認めているのも世界的に珍しく、2018年ではニュージーランド、パプアニューギニア、韓国の3か国だけである。(参考)
2019年5月には民法を改正して、アジアで初めて同性婚を合法化した。またジェンダー平等についても、アファーマティブ条項などによって手厚く確保されており、立法院の議員は女性議員が4割を超えている。選挙権、被選挙権について、20歳から18歳に引き下げる憲法改正案が2022年3月に立法院で可決されたが、11月の住民投票では否決されている。
このように台湾社会は「リベラル」な政治が実現し、民主主義的な社会を実現し、勝つ発展させようとしていることがわかる。もちろん、これは民進党・蔡英文政権のみの「手柄」ではなく、1987年まで全土に敷かれていた戒厳令を解除させ、民主化を勝ち取ってきた台湾人民の力、社会運動の力なのである。
大国間の同盟や軍事動向に一喜一憂し、「台湾有事」戦争の危機をあおるのではなく、こうした台湾の人びととどうやって繋がり、連帯していくのか、真剣に考える必要があるだろう。
日本国内では「台湾独立」志向の高い民進党が勝てば、中国からの圧力が強まり「台湾危機」に近づくのでは?といった単純な見方もあるようだが、そう単純なものでもないだろう…基本、台湾は「現状維持」である。
2023年6月の、台湾国立政治大学選挙研究センター「統一か独立か」の世論調査によれば、台湾が大陸中国と
できりかぎり早く統一する…1.6%
現状を維持した後、統一に向かう…5.8%
永遠に現状を維持する…32.1%
現状を維持した後、統一か独立かを決定する…28.6%
できる限り早く独立する…4.5%
現状を維持した後、独立に向かう…21.4%
であり、統一 < 独立 < 現状維持 といった世論の構成であり、「統一したい」という意見は少なく、基本は現状維持ということがわかる。なお「天然独」という言葉があって、1990年代以降の生まれの若年層(40歳未満)は「台湾は(すでに)独立した国家である」という認識が強く、改めて独立を宣言するといったことには関心がないので、こう呼ばれている。こういった人も「現状維持」派となる。ただこのような人たちも、台湾人民の主体性を侵す介入や侵略については強く抵抗するのだそうな。
ちなみに、同センターの同時期における、台湾住民の自己認識の調査では
自分は「台湾人」…62.8%(1992年調査では、17.6%)
「中国人」…2.5%(25.5%)
「どちらでもある」…30.5%(46.4%)
ということだ。
世界秩序の中では「一つの中国」原則があって「台湾は中国の一部」ということになっており、国連の場では「中国」が代表権を持ち、中国と台湾の二国と同時に国交を結ぶことは不可能でもある。米中間、日中韓の国交の原則のそうであるが、対外的にも内部的にも、台湾は「天然独」であるといえよう。
で、今回台湾の総統になった頼清徳氏が引き継いだ、民進党・蔡英文政権はどんなことを成し遂げてきたのか?
まず「脱原発」…ドイツの事例がよく取り上げられるが、民進党の綱領には「原発の新設に反対し、一定期間内に既存原発も閉鎖する」という条項がある。そして2016年10月20日、電気事業法改正案を閣議決定、段階的な電力自由化と「2025年に原発ゼロ」政策をとった。6基ある原発は40年の廃止期限が2025年5月に迫っている。台湾北部に建設中の第4原発は9割がた完成しているものの、事故により
中断したままである。もっとも2018年に住民投票が行われ、2025年の原発全廃は法律の条文から外されたが、廃止方針そのものは翻っていない。しかし原発政策も「住民投票」という究極の民主主義によって意思決定がなされていることに注目しよう。
つづいて「原住民政策」…「先住民政策」と書くべきだが、台湾では「原住民」と表記する…台湾には、漢民族が移住・定住する前から住んでいる少数民族が存在する。2016年8月、国民党・外来政権時代の原住民に対する差別を与えてきたことへ、政府を代表しての公式謝罪と権利回復を図る委員会の設置が行われた。立法院の議席や、教育・就職に原住民枠が設けられている。
北海道のアイヌ、琉球民族に対し、先住民としての権利や国会等での特別枠も設けず、盗んだ遺骨さえ返さない「帝国大学」のあるニッポンとは、大きな違いである。
また2018年「国家言語発展法」を制定したが、この中で「国家言語」とは「台湾における各固有のエスニック・グループが使用する自然言語及び台湾手話」と定義し、自然言語とは漢語系3言語…福佬人、客家人、外省人の各使用言語…と原住民16族の各言語を示している。すなわち、人口2300万人の台湾は言語の多様性を認めているのである。なお、手話を公用語と認めているのも世界的に珍しく、2018年ではニュージーランド、パプアニューギニア、韓国の3か国だけである。(参考)
2019年5月には民法を改正して、アジアで初めて同性婚を合法化した。またジェンダー平等についても、アファーマティブ条項などによって手厚く確保されており、立法院の議員は女性議員が4割を超えている。選挙権、被選挙権について、20歳から18歳に引き下げる憲法改正案が2022年3月に立法院で可決されたが、11月の住民投票では否決されている。
このように台湾社会は「リベラル」な政治が実現し、民主主義的な社会を実現し、勝つ発展させようとしていることがわかる。もちろん、これは民進党・蔡英文政権のみの「手柄」ではなく、1987年まで全土に敷かれていた戒厳令を解除させ、民主化を勝ち取ってきた台湾人民の力、社会運動の力なのである。
大国間の同盟や軍事動向に一喜一憂し、「台湾有事」戦争の危機をあおるのではなく、こうした台湾の人びととどうやって繋がり、連帯していくのか、真剣に考える必要があるだろう。
