前回の続き、朝永振一郎氏「物理学とは何だろうか」(下)の、「科学と文明」からである。
![物理学とは何だろうか 下【電子書籍】[ 朝永振一郎 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/rakutenkobo-ebooks/cabinet/6702/2000007926702.jpg?_ex=128x128)
物理学とは何だろうか 下【電子書籍】[ 朝永振一郎 ]
実験をやることができない、地球物理学について述べるにあたって、朝永氏は当時の再審理論「プレートテクトニクス」で地震が起こる仕組みがわかってきた…小松左京のSF[日本沈没」も例示しながら…ということを紹介すながら
物理学者はなんかというとすぐ実験をやって、直接みようとするんですけれども、地球物理学者はそういう直接出ない事がらを積み重ねて、こういう驚くべき地球の構造と地球の変化に見当をつけた。(p220)
朝永氏はこの講演で、ノーベル物理学賞、化学賞のメダルのデザインは、自然の女神がかぶっているベールを、サイエンスが少しめくってみようとしている図柄なんだと先に紹介している。それを受けて、次のように続けている。
ある意味での物理学者というのはいちばん頭の悪い存在でして、試験問題が出たときにカンニングをやるんです。こっそり実験というようなことをやってのぞいてしまう。そうしないとなかなかわからないという頭の悪いところがあるんです。つまり自然の女神のベールをめくってじかに見ないとわからないというのが物理学者なんですけども、地球物理学者はベールをめくるような失礼なことはしないで外からいろいろ見て、どんな顔であろうかということを知ることができる。とても物理学者はかなわんなと思うような推理力を働かせて、測定、観測、測量とか、あるいはいろんなことからこうゆうことを見つけた。これは驚くべきことだと思うんです。(p220~221)
もちろん、測定、観測、測量のためにはそれ以前の物理学による知識で得られた技術がぶんだんに使われ、大量のデータ処理にはコンピューターも使われている。しかし朝永氏が続けて言う
つまり自然の女神のベールをめくって顔をのぞくというような、そういうぶきっちょなことをしないで、ベールをそのままにしながら自然を知るという方法、こういうものが可能であるということです。(中略)自然の女神というのはただ黙って立っているだけではない。どういうことを質問しようかということを学者が充分考えて、いろいろな状況証拠をそろえた上で、こうでありましょうかと言って自然の女神にうかがうと、聞き方が悪きゃだめなんですけれど、上手に聞けば少なくとも、そうだとかそうではないということは答えてくださる。(p221)
そう、素直にあるがままの自然を観察し、そこから法則を見つけたりする科学が、地球物理学であり、気象物理学であるということなのだ。そこで分かった法則とかを丹念にコンピューターのプログラム、アルゴリズムに組み込み、膨大な計算をしているのがコンピューターシュミレーションなのだ!
だからコンピューターシュミレーションそのものが”偉い”のではなく、それをここに攻勢している物理の法則が”偉い”のである…そしてその中身は、現実によって補正・修正されるのだ。
さて気象や気候をコンピューターシュミレーションで解析し、予測するということは、IPCCの「地球温暖化予測」から明日明後日の天気予報まで広く行われているわけだが、「現実によって補正・修正」されるということを忘れてはならない…時に「自然の女神のベールをめくらない」地球物理学の分野ではそうであろう。ところが、優秀なコンピューターシュミレーションが出来上がってしまうと、主客が逆転してしまう…シュミレーションに合わないことは、認めないということが起こるのだ!
近藤邦明氏は、検証温暖化の中で次のように批判している。
![検証温暖化 20世紀の温暖化の実像を探る (シリーズ「環境問題を考える」) [ 近藤邦明 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/1234/9784883451234.jpg?_ex=128x128)
検証温暖化 20世紀の温暖化の実像を探る (シリーズ「環境問題を考える」) [ 近藤邦明 ]
2017年9月9日、NHKスペシャル「異常気象・スーパー台風」という番組が放映されました。その中で2017年7月5日から6日にかけて九州北部地方を襲った集中豪雨災害について、《数値計算に基づく予測を大幅に上回る異常な豪雨による災害であった》と報告していました。
番組の中で名古屋大学の坪木和久氏(地球水循環研究センター気象学研究室)は「日本の天気予報は世界でも最も優秀な気象予測モデルに基いている。その日本の天気予報でも九州北部豪雨は予測できなかった。温暖化によって、世界で最も優秀な日本の気象予報でさえも予測できないほど、現実の気象現象が異常になっている。」と述べていましたが、これは噴飯物のコメントでした。
現実に起こった気象現象は、自然現象として常に100%正しい、物理的に必然的な結果です。それが人間社会にとってかつて経験したことのない”異常気象”であったとしても、100%正常な自然現象なのです。気象予測数値モデルが予測できなかったということは、数値モデルが気象現象を正しく表現できないことを示しているだけなのです。(p231~232)
気象予測モデルによるコンピューターシュミレーション結果と違う結果がでたら、シュミレーショにに入れた前提条件やらなにやらの「どこかがおかしい!」という当然の判断をせずに、自然のほうが「異常」であると判断することのおかしさ、愚かさを示している坪木氏のコメントである。謙虚さがたりない、ゴーマンだとしか言いようがないわけだ。
自然の女神の言葉を素直に聞かず、コンピューターに”解析”させて間違った答えを引き出しても、コンピューターのほうが正しい!と豪語する科学に未来はあるだろうか?真鍋淑郎氏のノーベル賞受賞が、気象部地理学、地球物理学の傲慢な進化をこれまで以上に推し進めないか?非常に気がかりである。
![物理学とは何だろうか 下【電子書籍】[ 朝永振一郎 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/rakutenkobo-ebooks/cabinet/6702/2000007926702.jpg?_ex=128x128)
物理学とは何だろうか 下【電子書籍】[ 朝永振一郎 ]
実験をやることができない、地球物理学について述べるにあたって、朝永氏は当時の再審理論「プレートテクトニクス」で地震が起こる仕組みがわかってきた…小松左京のSF[日本沈没」も例示しながら…ということを紹介すながら
物理学者はなんかというとすぐ実験をやって、直接みようとするんですけれども、地球物理学者はそういう直接出ない事がらを積み重ねて、こういう驚くべき地球の構造と地球の変化に見当をつけた。(p220)
朝永氏はこの講演で、ノーベル物理学賞、化学賞のメダルのデザインは、自然の女神がかぶっているベールを、サイエンスが少しめくってみようとしている図柄なんだと先に紹介している。それを受けて、次のように続けている。
ある意味での物理学者というのはいちばん頭の悪い存在でして、試験問題が出たときにカンニングをやるんです。こっそり実験というようなことをやってのぞいてしまう。そうしないとなかなかわからないという頭の悪いところがあるんです。つまり自然の女神のベールをめくってじかに見ないとわからないというのが物理学者なんですけども、地球物理学者はベールをめくるような失礼なことはしないで外からいろいろ見て、どんな顔であろうかということを知ることができる。とても物理学者はかなわんなと思うような推理力を働かせて、測定、観測、測量とか、あるいはいろんなことからこうゆうことを見つけた。これは驚くべきことだと思うんです。(p220~221)
もちろん、測定、観測、測量のためにはそれ以前の物理学による知識で得られた技術がぶんだんに使われ、大量のデータ処理にはコンピューターも使われている。しかし朝永氏が続けて言う
つまり自然の女神のベールをめくって顔をのぞくというような、そういうぶきっちょなことをしないで、ベールをそのままにしながら自然を知るという方法、こういうものが可能であるということです。(中略)自然の女神というのはただ黙って立っているだけではない。どういうことを質問しようかということを学者が充分考えて、いろいろな状況証拠をそろえた上で、こうでありましょうかと言って自然の女神にうかがうと、聞き方が悪きゃだめなんですけれど、上手に聞けば少なくとも、そうだとかそうではないということは答えてくださる。(p221)
そう、素直にあるがままの自然を観察し、そこから法則を見つけたりする科学が、地球物理学であり、気象物理学であるということなのだ。そこで分かった法則とかを丹念にコンピューターのプログラム、アルゴリズムに組み込み、膨大な計算をしているのがコンピューターシュミレーションなのだ!
だからコンピューターシュミレーションそのものが”偉い”のではなく、それをここに攻勢している物理の法則が”偉い”のである…そしてその中身は、現実によって補正・修正されるのだ。
さて気象や気候をコンピューターシュミレーションで解析し、予測するということは、IPCCの「地球温暖化予測」から明日明後日の天気予報まで広く行われているわけだが、「現実によって補正・修正」されるということを忘れてはならない…時に「自然の女神のベールをめくらない」地球物理学の分野ではそうであろう。ところが、優秀なコンピューターシュミレーションが出来上がってしまうと、主客が逆転してしまう…シュミレーションに合わないことは、認めないということが起こるのだ!
近藤邦明氏は、検証温暖化の中で次のように批判している。
![検証温暖化 20世紀の温暖化の実像を探る (シリーズ「環境問題を考える」) [ 近藤邦明 ]](https://thumbnail.image.rakuten.co.jp/@0_mall/book/cabinet/1234/9784883451234.jpg?_ex=128x128)
検証温暖化 20世紀の温暖化の実像を探る (シリーズ「環境問題を考える」) [ 近藤邦明 ]
2017年9月9日、NHKスペシャル「異常気象・スーパー台風」という番組が放映されました。その中で2017年7月5日から6日にかけて九州北部地方を襲った集中豪雨災害について、《数値計算に基づく予測を大幅に上回る異常な豪雨による災害であった》と報告していました。
番組の中で名古屋大学の坪木和久氏(地球水循環研究センター気象学研究室)は「日本の天気予報は世界でも最も優秀な気象予測モデルに基いている。その日本の天気予報でも九州北部豪雨は予測できなかった。温暖化によって、世界で最も優秀な日本の気象予報でさえも予測できないほど、現実の気象現象が異常になっている。」と述べていましたが、これは噴飯物のコメントでした。
現実に起こった気象現象は、自然現象として常に100%正しい、物理的に必然的な結果です。それが人間社会にとってかつて経験したことのない”異常気象”であったとしても、100%正常な自然現象なのです。気象予測数値モデルが予測できなかったということは、数値モデルが気象現象を正しく表現できないことを示しているだけなのです。(p231~232)
気象予測モデルによるコンピューターシュミレーション結果と違う結果がでたら、シュミレーショにに入れた前提条件やらなにやらの「どこかがおかしい!」という当然の判断をせずに、自然のほうが「異常」であると判断することのおかしさ、愚かさを示している坪木氏のコメントである。謙虚さがたりない、ゴーマンだとしか言いようがないわけだ。
自然の女神の言葉を素直に聞かず、コンピューターに”解析”させて間違った答えを引き出しても、コンピューターのほうが正しい!と豪語する科学に未来はあるだろうか?真鍋淑郎氏のノーベル賞受賞が、気象部地理学、地球物理学の傲慢な進化をこれまで以上に推し進めないか?非常に気がかりである。