前編のつづき…
 ここから「グローバル農業」への批判に移る…様々な「規制緩和」で日本がグローバル農業資本の駅時になっているのかについて、種子法廃止、種の譲渡、無断時価採種の禁止、遺伝子組み換えでない(non-GM)表示の実質禁止、全農の株式会社化、除草剤の輸入穀物残留基準値の大幅緩和、ゲノム編集の完全な野放し、農産物検査規則の改定などがある。特にGM種子とセットのグリホサートについて、日本はトウモロコシ100%、大豆94%、小麦90%弱を輸入に頼っているが、そのすべてにグリホサートが残留している。世界で一番グリホサートを食べているのが日本人。また関節リウマチの病原性に関与する菌がグリホサート抵抗性をもっていることから、グリホサートによる関節リウマチ発祥の危険性も指摘されている。  
 ゲノム食品について、血圧を抑えるGABA含有量を高めたゲノムトマトを20222年から障がい者施設に、2023年から小学校に「無償配布」して広める「ビジネスモデル」(米国すらやっていない)もある。
 逆にいうと、学校給食が鍵となる…地元の安全・安心な農産物を学校給食を通じて提供する活動・政策の強化は、頑張る生産者にも大きな需要確保、出口対策になる。千葉県いすみ市は1俵2.4万円、山県市はJAギフから3万円、亀岡市は3.6万円、常陸太田市はJA常陸の有機米を+1万円で買い取っている。世田谷区では産地と連携協定を結んで、学校で有機給食を出しているし、品川区も学校給食の野菜をすべて有機にすると発表しており、そうした連携協定を結ぶ取り組みも様々な自治体で広まっている。
 ゲノム食品は、世界の消費者は「買わない‼」…ゲノム編集をした真鯛の販売が始まった米国では「日本の寿司は食わねぇ」と発信している。
 一方、農水省にとってTPP交渉への参加は、長年の努力が水泡に帰すもので、ありえない選択肢だった。官邸における各省のパワーバランスが崩れ、関連業界と自らの利害のために食と農林漁業を犠牲にする省(経産省・財務省?)が官邸を掌握したからだ。官邸には「人事と金とスキャンダル」で反対の声を押さえつけていく”天才”がいた。
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 ところで産地と小売の取引交渉力だが、1が産地の交渉力が完全優位、0が完全劣位なのだが、全品目が買いたたかれ、0.5を下回っている。農家も苦しくなって、採算量が激減している。
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 野菜の作付面積、果樹の生産面積も軒並み減少しているありさまだ…こうした中、協同組合・共助組織が大切な時代になってくる。生産者も消費者も労働者も守るものなのだが、現在の農協改革は「農業所得向上」名目の「農協潰し」だ。
 こうした中、農林水産業のゼロエミッション・カーボンニュートラル化を目指す「みどり戦略」が掲げられている。しかしここにグローバル種子・農業企業やIT大手企業のビジネス構想に飲み込まれると「スマート農業」になるドローンやセンサーで管理・制御されたデジタル農業だ…農家がいなくなる。また農業こそ最大の二酸化炭素排出産業ということで、カーボンニュートラルを目指す「フードテック」とは、代替食糧生産(遺伝子操作技術も活用)が必要になってくる…人口肉、培養肉、昆虫食、陸上養殖、植物工場、無人農場など…こんなものを、国を挙げて取り組もうとしている。
 巨大な力に種を握られると命を握られる…協同組合、共助組織、市民運動組織が核となって、安全・安心な食と暮らしを守る、種から消費までの地域住民ネットワークを強化し、地域循環型経済を確立する、ローカル自給圏を構築することが大切だ。「植えるか、餓えるか」だ、消費者も生産者に、住民はすべて農家に…まず地域からしくみづくりを始めよう。
 そして、国の政策も替える、生産者に必要な支払額と、消費者が払える額のギャップを埋めるのが正負の役割。食料安全保障推進法(仮称)で、今の農業予算2兆円に対し、給食無償化も含めプラス3兆円、5兆円ぐらいにしればよい。
 今の農漁家の踏ん張りこそが希望の光だ。今でも世界10位の農業生産額を達成している日本の農家はまさに「精鋭」である、消費者もいっしょに頑張りましょう!みんなで作って、みんなで食べる明るい未来…というようなかたちで、講演を終えられた。
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 10分間のトイレ休憩の後、質疑応答が行われた。また休憩時間には鈴木氏の著書の販売と「サイン会」も行われた。質問の中に「参政党の農業政策についてどう考えるか?」というのがあったが、鈴木氏はそれについては答えず、どこの政党にも自分と近い政策をかたる人がいることにふれ、自民党の積極財政派(農業にも積極財政)に期待しているようであった。その他、農業が持つ防災の視点(10兆円のダム機能)や食管法の復活、これからの農業のモデルになる地域や、フードロス、循環農業についてなどの質問に、鈴木氏は一つひとつ短いけれど丁寧に答えられた。
 ではでは…