何回か書いているが、岸田政権によって今行われている大軍拡は、決してアメリカのいいなりになり、要求を”飲まされて”仕方なくやっているものではない。日帝が独自に生き残りをかけて、アメリカを巻き込みながら主体的に行っているものである。
このへんを理論展開しているのが、革命的共産主義者同盟再建協議会が発効する理論誌「展望」第31号(2024年7月)の「綱領的世界認識のために 岸田大軍拡と闘う日本海遊闘争の飛躍を」(落合薫)論文である。以下、ちょっとずつ引用して進める。
岸田首相自身が訪米後の米紙『ニューズウィーク』のインタビュー(2024年5月24日号、4月17日取材)で、「再軍備」という言葉を使い、「この点についてはいかなる誤解もあってはならない」と述べている。この古色蒼然とした言葉で、岸田首相は何を言おうというのか?従来の軍事強化は「軍備」とは言えない。自分はいままでとは次元の違った軍備強化をする、ということだろう。(p31~32)
彼らの言うところの「異次元の軍拡」とはこういったことだ…今までの「専守防衛」の軍備は軍備ではない、「敵基地攻撃能力」を持つ軍備こそ、真の軍備であると言いたいのだろう。その軍備は、アメリカのためにやるものでは当然違う。
岸田首相の意図は、安倍首相が打ち出した「自由で開かれたインド太平洋」戦略という「故人のレガシーを引き継」ぎ、東南アジアやアフリカへの勢力拡大に注力すること、および日米安保同盟を通じて米帝・米軍を対中国戦争に引きずりこむことである。(p32)
そう、これが日帝、岸田首相の本音である。そしてすぐ、以下に続く…
「アメリカの戦争に日本がまきこまれる」危険を煽る言説が乱れ飛ぶ。しかし、自国の政権が大軍拡に転じ、対中国戦争を挑発する軍備配置を展開しているときに、何と的外れなことか。それどころか。自国政府養護の極みである。岸田政権が、2022年末の防衛3文書で中国を「最大の戦略的挑発」と「仮想敵国」規定したのに対し、関係諸国で公然と中国を「仮想敵国視」した国はない。米国ですら「唯一の競争相手」としか言っていない(2022年10月、米国家安全保障戦略)。米軍部や軍産複合体の関係者が中国の台湾進攻を盛んに煽っているが、それは自衛隊を「捨て駒」として中国と戦わせるための「策略」に等しい。(p32~33)
と続ける。「中国敵視」政策は、日帝のほうが突出しているのだ。だから、日帝は米帝の「傀儡」ではない…独自の政策として中国を敵視し、対中国戦争に米帝を巻き込み、支援を受けながら(さすがに大国・中国と一国だけで戦うことはできない)戦う…この宣言が「最大の戦略的挑発」あんおである。
その後、論文は自衛隊の実戦化について述べている。5月3日に空母化された「いずも」「かが」を含めた6隻の艦船が「令和6年度インド太平洋方面派遣」と称して12月15日まで半年以上も「実践的覇権」がされたと紹介し(ちなみに「展望」第31号の、ひとつ前の岸本論文では、この艦隊を「新連合艦隊」と呼んでいる)、また4月6日から7日にかけ、南中国海で米比豪の海軍とともに海上自衛隊が「海上共同活動」という、「訓練」や「演習」の名称を冠しない対中国戦争挑発発動に参加したと書いている。そして『軍事研究』2024年6月号から引用して、主な日米共同軍事演習をまとめている。
数多くの日米共同演習が行われているが、ここ1両年の特徴として
①頻度が飛躍的に増え、ほとんど日常的に日本周辺で行われている。
②日米の全軍種が参加する多様な形態の演習が行われている。
③日米に加え、豪・英・加・比・仏・蘭・独軍が参加するケースが増えている。
④「米軍は矛、自衛隊は盾」論とは逆に、自衛隊が攻撃面を、米軍が防御ないし兵站面を受け持つ訓練が増えている。『軍事研究』の記述を引用すると、
①について、「南西方面ではあくまで主役は自衛隊であり、アメリカ軍は自衛隊を支援するという役割分担だったようだ」
③について、「アメリカ軍の小型揚陸艦艇部隊が、奄美大島に展開した陸上自衛隊に向けて、燃料、糧食、医薬品を輸送した」
④について、「指揮所演習で、主として自衛隊が敵の攻撃に対処しながら、アメリカ陸軍と壕陸軍が日本に増援部隊を派遣するというシナリオ(以下略) (p34~35)
と書かれている。
後段の③については、まさに攻撃をしている自衛隊に対して、米軍が燃料や糧食を補給する後方支援を行っているので④についての間違いではないか?と思うのであるが、ここらへんは重要だと思うので太字にした…要するに南西方面を主戦場とする対中国戦争は、日帝自らの戦争として戦う、そのための「日米共同演習」であるということである。
また、岸田軍拡は武器の性能向上とそれの大量購入に我々の税金が使われるわけだが、その武器は米国の言いなりに米国からバカスカ購入するわけではない(そういった「反米」構図はわかりやすい?のであるが…)実際、次期戦闘機は日本、英国、イタリアとの共同開発である。それを日本から第3国に輸出可能にする閣議決定が3月26日に行われた。日本の武器産業に利益を与え、育成するためである。同時に国家安全保障会議で、武器輸出のルールを定めた「防衛装備移転3原則」の「運用指針」を改訂したのであるが
ここに岸田大軍拡の核心を見ることができる。すなわち、
①米国に依拠しない最先端武器の開発、輸出、実戦化
②日本における軍産学複合体の本格的形成
③NATO(欧米)と連携し、また対抗するインド太平洋の軍事的核の形成(p35)
とある。武器の開発、実戦化も日帝主導で行うということだ。
一方、米国との共同開発を通じて大軍拡に向かう動きもあり、これは①超音速兵器の開発…ロシアはすでに実践使用し、中国や朝鮮も開発に成功したとされる。アメリカは開発段階で重大な失敗をしたとされ、日本の技術を取り込む必要があるのだそうな。②中距離ミサイルの開発・量産…1988年に発効したINF(中距離核戦力)全廃条約により、米ソは核を搭載できる中距離ミサイルを一定廃棄したのだが、ロシアが条約違反をして中距離ミサイルを開発・製造していたため、2019年に条約は失効した。また条約に縛られない中国が中距離ミサイルを大量に開発・製造・配備している…ゆえにより精密なチュ距離巡航ミサイルの開発で日米共同の利害が一致するのだ。そして、
すでに三菱重工が長射程の4種類のミサイルの開発・量産を受注したことが明らかとなった。その4種類とは、射程1000~3000キロで敵基地攻撃能力を持つ一二式地対艦誘導弾向上型、島嶼防衛用高速滑空弾、超音速誘導弾、地対艦・地対地精密誘導弾であるという。そしてこのようなスタンドオフ防衛能力の開発や量産や輸入のために約7340億円がすでに計上されている(吉田敏浩「ルポ軍事優先社会」『世界』2024年6月号)。なんのことはない、米国との共同開発以前に、日本の軍需産業に開発・量産を発注しているのである。自国企業による最新兵器の開発・生産・輸出・実戦配備を許しておいて、アメリカの兵器を購入することだけを非難するのは的外れである。(p36)
と展開している。
ちなみに、2024年度防衛白書に、一二式地対艦誘導弾能力向上型の画像が公開されているそうだ。
乗りものニュース
離島防衛の切り札か「国産ステルス長射程ミサイル」防衛省が初公開! 前倒しで配備も
防衛省は2024年7月12日(金)、2024年度版の防衛白書を公表。その中で、2025年度から配備を開始する新型ミサイル「12式地対艦誘導弾能力向上型」の画像を公開しました。
このへんを理論展開しているのが、革命的共産主義者同盟再建協議会が発効する理論誌「展望」第31号(2024年7月)の「綱領的世界認識のために 岸田大軍拡と闘う日本海遊闘争の飛躍を」(落合薫)論文である。以下、ちょっとずつ引用して進める。
岸田首相自身が訪米後の米紙『ニューズウィーク』のインタビュー(2024年5月24日号、4月17日取材)で、「再軍備」という言葉を使い、「この点についてはいかなる誤解もあってはならない」と述べている。この古色蒼然とした言葉で、岸田首相は何を言おうというのか?従来の軍事強化は「軍備」とは言えない。自分はいままでとは次元の違った軍備強化をする、ということだろう。(p31~32)
彼らの言うところの「異次元の軍拡」とはこういったことだ…今までの「専守防衛」の軍備は軍備ではない、「敵基地攻撃能力」を持つ軍備こそ、真の軍備であると言いたいのだろう。その軍備は、アメリカのためにやるものでは当然違う。
岸田首相の意図は、安倍首相が打ち出した「自由で開かれたインド太平洋」戦略という「故人のレガシーを引き継」ぎ、東南アジアやアフリカへの勢力拡大に注力すること、および日米安保同盟を通じて米帝・米軍を対中国戦争に引きずりこむことである。(p32)
そう、これが日帝、岸田首相の本音である。そしてすぐ、以下に続く…
「アメリカの戦争に日本がまきこまれる」危険を煽る言説が乱れ飛ぶ。しかし、自国の政権が大軍拡に転じ、対中国戦争を挑発する軍備配置を展開しているときに、何と的外れなことか。それどころか。自国政府養護の極みである。岸田政権が、2022年末の防衛3文書で中国を「最大の戦略的挑発」と「仮想敵国」規定したのに対し、関係諸国で公然と中国を「仮想敵国視」した国はない。米国ですら「唯一の競争相手」としか言っていない(2022年10月、米国家安全保障戦略)。米軍部や軍産複合体の関係者が中国の台湾進攻を盛んに煽っているが、それは自衛隊を「捨て駒」として中国と戦わせるための「策略」に等しい。(p32~33)
と続ける。「中国敵視」政策は、日帝のほうが突出しているのだ。だから、日帝は米帝の「傀儡」ではない…独自の政策として中国を敵視し、対中国戦争に米帝を巻き込み、支援を受けながら(さすがに大国・中国と一国だけで戦うことはできない)戦う…この宣言が「最大の戦略的挑発」あんおである。
その後、論文は自衛隊の実戦化について述べている。5月3日に空母化された「いずも」「かが」を含めた6隻の艦船が「令和6年度インド太平洋方面派遣」と称して12月15日まで半年以上も「実践的覇権」がされたと紹介し(ちなみに「展望」第31号の、ひとつ前の岸本論文では、この艦隊を「新連合艦隊」と呼んでいる)、また4月6日から7日にかけ、南中国海で米比豪の海軍とともに海上自衛隊が「海上共同活動」という、「訓練」や「演習」の名称を冠しない対中国戦争挑発発動に参加したと書いている。そして『軍事研究』2024年6月号から引用して、主な日米共同軍事演習をまとめている。
数多くの日米共同演習が行われているが、ここ1両年の特徴として
①頻度が飛躍的に増え、ほとんど日常的に日本周辺で行われている。
②日米の全軍種が参加する多様な形態の演習が行われている。
③日米に加え、豪・英・加・比・仏・蘭・独軍が参加するケースが増えている。
④「米軍は矛、自衛隊は盾」論とは逆に、自衛隊が攻撃面を、米軍が防御ないし兵站面を受け持つ訓練が増えている。『軍事研究』の記述を引用すると、
①について、「南西方面ではあくまで主役は自衛隊であり、アメリカ軍は自衛隊を支援するという役割分担だったようだ」
③について、「アメリカ軍の小型揚陸艦艇部隊が、奄美大島に展開した陸上自衛隊に向けて、燃料、糧食、医薬品を輸送した」
④について、「指揮所演習で、主として自衛隊が敵の攻撃に対処しながら、アメリカ陸軍と壕陸軍が日本に増援部隊を派遣するというシナリオ(以下略) (p34~35)
と書かれている。
後段の③については、まさに攻撃をしている自衛隊に対して、米軍が燃料や糧食を補給する後方支援を行っているので④についての間違いではないか?と思うのであるが、ここらへんは重要だと思うので太字にした…要するに南西方面を主戦場とする対中国戦争は、日帝自らの戦争として戦う、そのための「日米共同演習」であるということである。
また、岸田軍拡は武器の性能向上とそれの大量購入に我々の税金が使われるわけだが、その武器は米国の言いなりに米国からバカスカ購入するわけではない(そういった「反米」構図はわかりやすい?のであるが…)実際、次期戦闘機は日本、英国、イタリアとの共同開発である。それを日本から第3国に輸出可能にする閣議決定が3月26日に行われた。日本の武器産業に利益を与え、育成するためである。同時に国家安全保障会議で、武器輸出のルールを定めた「防衛装備移転3原則」の「運用指針」を改訂したのであるが
ここに岸田大軍拡の核心を見ることができる。すなわち、
①米国に依拠しない最先端武器の開発、輸出、実戦化
②日本における軍産学複合体の本格的形成
③NATO(欧米)と連携し、また対抗するインド太平洋の軍事的核の形成(p35)
とある。武器の開発、実戦化も日帝主導で行うということだ。
一方、米国との共同開発を通じて大軍拡に向かう動きもあり、これは①超音速兵器の開発…ロシアはすでに実践使用し、中国や朝鮮も開発に成功したとされる。アメリカは開発段階で重大な失敗をしたとされ、日本の技術を取り込む必要があるのだそうな。②中距離ミサイルの開発・量産…1988年に発効したINF(中距離核戦力)全廃条約により、米ソは核を搭載できる中距離ミサイルを一定廃棄したのだが、ロシアが条約違反をして中距離ミサイルを開発・製造していたため、2019年に条約は失効した。また条約に縛られない中国が中距離ミサイルを大量に開発・製造・配備している…ゆえにより精密なチュ距離巡航ミサイルの開発で日米共同の利害が一致するのだ。そして、
すでに三菱重工が長射程の4種類のミサイルの開発・量産を受注したことが明らかとなった。その4種類とは、射程1000~3000キロで敵基地攻撃能力を持つ一二式地対艦誘導弾向上型、島嶼防衛用高速滑空弾、超音速誘導弾、地対艦・地対地精密誘導弾であるという。そしてこのようなスタンドオフ防衛能力の開発や量産や輸入のために約7340億円がすでに計上されている(吉田敏浩「ルポ軍事優先社会」『世界』2024年6月号)。なんのことはない、米国との共同開発以前に、日本の軍需産業に開発・量産を発注しているのである。自国企業による最新兵器の開発・生産・輸出・実戦配備を許しておいて、アメリカの兵器を購入することだけを非難するのは的外れである。(p36)
と展開している。
ちなみに、2024年度防衛白書に、一二式地対艦誘導弾能力向上型の画像が公開されているそうだ。
乗りものニュース
離島防衛の切り札か「国産ステルス長射程ミサイル」防衛省が初公開! 前倒しで配備も
防衛省は2024年7月12日(金)、2024年度版の防衛白書を公表。その中で、2025年度から配備を開始する新型ミサイル「12式地対艦誘導弾能力向上型」の画像を公開しました。
画像は試作品とのことですが、原型の12式地対艦誘導弾の弾体とは全く異なるステルス形状をしています。(以下略)
日帝独自の岸田大軍拡は、ここまで進んでいるのである。
後編に続くよ…
日帝独自の岸田大軍拡は、ここまで進んでいるのである。
後編に続くよ…