沖縄で繰り返されていた米軍関係者による性暴力事件と、それが日本政府によって隠蔽されていた問題で、沖縄では8月10日に県民大集会が行われる。Y!ニュース琉球新報より
来月10日に県民大集会 相次ぐ米兵事件を糾弾 沖縄
 辺野古新基地を造らせないオール沖縄会議と普天間、嘉手納爆音訴訟団の3団体は8月10日午後4時から、米兵による少女誘拐暴行事件など相次ぐ米兵による性犯罪を糾弾する県民大集会を宜野湾市のユニオンですからドーム宜野湾で開催する。会場は約2千人収容で、1600人規模の集会を目指す。
 集会では、今年8月13日で、宜野湾市の沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落した事故から20年を迎えることを受け、オスプレイの飛行停止と普天間飛行場の閉鎖・返還も求める。会場は午後3時開場する。県民大集会の名称は「『欠陥機オスプレイの飛行停止と普天間飛行場の閉鎖・返還』を求め『米兵の少女暴行と政府による事件隠ぺい』を糾弾する8・10沖縄県民大集会」。
(吉田健一)

なぜ米軍・米兵による性暴力事件が沖縄で大きな問題として取り上げられ「県民大集会」まで開かれるのか?は、本ブログを読んでくれている人には自明のことであろうが…それは、米軍が今も沖縄に対し、「占領軍」としてふるまっている、圧倒的な”権力勾配”でもって、沖縄県民と対峙しているからに他ならない。権力勾配があれば、性暴力を含めたあらゆる犯罪、人権侵害、ハラスメントが起こされる。
 その権力勾配を担保しているのが、日米地位協定であり、日米安保体制(日米同盟)である。しかもそれは日本政府が積極的に維持し、沖縄に押し付けている体制である。そしてご存じの通り、日米地位協定は、日本に駐留する米軍関係者の特権的な扱いを規定している。事故を起こしたり、犯罪を犯したりしても、日本の警察は自由に彼らを捜査できない。逮捕・拘束・起訴などのハードルも高い。そうした「特権的」な米軍の地位を規定している日米地位協定であるが、他国が米国と結んでいる地位協定は、過去には米軍の「特権的」な地位を認めた不平等なものであったとしても、様々に改訂され、自国民の権利や主権を守るようになってきている。しかし日本の地位協定のみ、日本政府が改定をさぼり「運用の改善」でお茶を濁している状況だ。
 1972年の「復帰」以前は、もろに米軍は占領軍として軍政を敷き、我が物顔で沖縄を統治していた…そのため米軍による事故や犯罪も野放し状態であった。「復帰」後もその状況は変わらず、例えば1995年には米兵3人による少女暴行事件が起こった。その時は10慢人規模の「県民大会」が開かれ、沖縄の米軍基地撤去、負担軽減の闘いが繰り広げられた…それによって、市街地の真ん中にあって危険な「普天間飛行場」の撤去が決まる(ただし県内・辺野古移設という条件つき)。それぐらい、米軍による「性暴力」は大問題なのである。
 2016年にも米軍関係者による性暴力事件が起こった。うるま市に住んでいた20歳の女性がウォーキング中に襲われ、殺害された後、恩納村の雑木林に捨てられたのである。たった8年前にも、このようなむごい事件が起こっているのである。
 日本政府は、沖縄における米軍の性暴力事件は、沖縄県民の怒りを呼び覚まし、日米安保・日米同盟の根幹を揺るがすものであると認識している。だから「プライバシーへの配慮」を口実に、性暴力事件を隠蔽していたのである。一応””平等”を期すために、青森や神奈川、山口など他の米軍基地がある自治体に対しても同じ対応そとっていたということであるが、それも大問題である。また、今回明るみになったのは、たまたま新聞社の人間が裁判所で裁判の予定をメモしていたら、偶然にも米軍の犯罪の公判期日がひかかったためであり、政府は未来永劫、これを隠し続けるつもりであったのだ。許しがたい話である。

 また米軍の性暴力が問題視されるのは、たんに占領軍が特権的な意識をもって沖縄県民に対峙しているからだけではない…軍隊による性暴力は、戦時性暴力と結びついているからである。戦時性暴力は、戦争の時、相手・敵国の人間に対し何をしてもよい、女子どもは犯しても、殺してもよりという暴力である…軍隊による戦争犯罪、虐殺やジェノサイドにつながるものである。
 歴史をひもとけば、かつての日本軍は、中国、アジアを侵略し、現地で多くの女性に性暴力をふるった。南京大虐殺をはじめとする虐殺、戦争犯罪を繰り返した。兵士が戦場で性暴力をふるわないようにするためと称して「慰安婦」制度をつくり、多くの女性を強制的に慰安婦にして「性暴力」をふるった。第二次大戦時のナチスドイツ軍や旧ソ連軍、さらには連合国軍も含め「慰安婦」制度こそつくりはしなかったものの、戦場や占領地での性暴力事件は起こされている。米軍は朝鮮戦争やベトナム戦争で、旧日本軍のやってきたことをくり返した。90年代、ユーゴスラビア解体の過程で「民族浄化」が叫ばれ、クロアチア人がセルビア人を、セルビア人がクロアチア人を「性暴力」も使って根絶やしにしようとした…こうした戦時性暴力は枚挙にいとまがない。だから絶対に曖昧にしてはいけないのである。

 お笑い芸人であろうが映画監督であろうが、米軍・自衛隊員であろうが「性暴力」は絶対にしてはいけない…その前提をあたりまえのものとしながら、軍による性暴力は、戦時性暴力につながっているのである。だから米軍による性暴力を見逃すことは許されない。そして自衛隊内で繰り返される「セクハラ事件」も、絶対に曖昧にしてはならない…それは「いつか来た道」をたどることになるからである。