セックスワーク論批判でよく引き合いに出されるのが「ドイツ・オランダでは性産業を”非犯罪化”したので、かえって性産業が野放図に広がり、結局女性たちが苦しむ結果になっている」というものがある。要するに、ドイツ・オランダは「セックスワーク論」が主張する「非犯罪化」で失敗しているというものだ。
現象だけみるとそうであろう…しかしドイツ・オランダは元々性産業が一定「合法的」であった国である。そういった国の規制が、新自由主義政策の下ということでかなり撤廃されたうえでの「非犯罪化」であることに注意しよう。
その前に、非犯罪化と合法化の違いについて…
「合法化」は、特定法を定めて売買春を取り締まり、この法を逸脱する行為を犯罪にするので、実は半分は「犯罪化」であると言っていい。対照的に、「非犯罪化」は、売買春に限って取り締まる特定の法を作らない、ということです。しかし、「合法化」と違うからといって非合法でいいというわけではない。そうではなく、他の産業や仕事と同じように、労働法・商法・民法などといった一般法の範囲内で営まれるようにするのが「非犯罪化」なのです。(セックスワークスタディーズ 第6章 セックスワーカーへの暴力をどう防ぐか 青山薫 p138)
この、他の産業や仕事と同じように、労働法・商法・民法などといった一般法の範囲内で営まれるようにすると言うのが、セックスワーク論のもうひとつのキモなのだ。要友紀子氏も以下のように述べている。
そうなるのは、日本の性産業が、「市場としてのみ存在している」からです。一般的に、他の産業や職業での仕事に伴う労働者の被害や怪我・病気の問題は、労災として救済されるのと同時に、それらが起こらないように、安全で健康に働けるような労働環境改善・法制定・施策・研修・社会啓発などの被害を減らす仕組みづくりが行われます。
現象だけみるとそうであろう…しかしドイツ・オランダは元々性産業が一定「合法的」であった国である。そういった国の規制が、新自由主義政策の下ということでかなり撤廃されたうえでの「非犯罪化」であることに注意しよう。
その前に、非犯罪化と合法化の違いについて…
「合法化」は、特定法を定めて売買春を取り締まり、この法を逸脱する行為を犯罪にするので、実は半分は「犯罪化」であると言っていい。対照的に、「非犯罪化」は、売買春に限って取り締まる特定の法を作らない、ということです。しかし、「合法化」と違うからといって非合法でいいというわけではない。そうではなく、他の産業や仕事と同じように、労働法・商法・民法などといった一般法の範囲内で営まれるようにするのが「非犯罪化」なのです。(セックスワークスタディーズ 第6章 セックスワーカーへの暴力をどう防ぐか 青山薫 p138)
この、他の産業や仕事と同じように、労働法・商法・民法などといった一般法の範囲内で営まれるようにすると言うのが、セックスワーク論のもうひとつのキモなのだ。要友紀子氏も以下のように述べている。
そうなるのは、日本の性産業が、「市場としてのみ存在している」からです。一般的に、他の産業や職業での仕事に伴う労働者の被害や怪我・病気の問題は、労災として救済されるのと同時に、それらが起こらないように、安全で健康に働けるような労働環境改善・法制定・施策・研修・社会啓発などの被害を減らす仕組みづくりが行われます。
ほかの産業や職業と同じく、セックスワークにおける労働者としての権利を保障することによってのみ、悪事を正すことができるのです。(セックスワークスタディーズ 第7章 どうすれば安全に働けるか 要友紀子 p172)
安全で健康に働けるような労働環境改善・法制定・施策・研修・社会啓発などの被害を減らす仕組みづくりは、おそらく労働法、労働基準法、労働安全衛生法の適用を受けるということである。製造業や建設業なんかで働いている人はご存じだろうが、労働安全衛生法には事細かく労働災害を防ぐための仕組みやしなければならないことが規定され、事業者に義務付けられている。もちろん違反した事業者に対するペナルティーや個人への罰則も存在する。
性産業が「危険」で「ストレスフル」で「健康を害する(望まぬ妊娠等も含む)」リスクが大きいのであれば、それに合わせた特別な規則等を新たに制定し、事業者に守らせる必要がある…これが「非犯罪化」のために必要なのだ。(そしてこういった法や規則づくりに、当事者の声を聞けということである)
ドイツやオランダの事例をみると、そういった規制がほとんどなされないまま「非犯罪化」され、事業者のやりたい放題になっているのが問題なのである。正確なことを言えばセックスワーク論の適用によって状況が悪くなったのではなく、セックスワーク論を口実にして新自由主義のため”換骨奪胎”した適用による失敗なのだ。”労働安全衛生法を守らせる”ためには公的機関の介入が絶対に必要になり、そのため多くのリソースを割かねばならない…新自由主義政策下でそんな余裕はなく、規制緩和は必ず労働条件の悪化に結びつくのである。逆にこれは、新自由主義下では「セックスワーク論」を適用することは出来ず、従ってセックスワーク論者もまた新自由主義と闘わなければならないということでもある。ひゃぁ~大変だ‼
ついでにいうと、ドイツでは2017年に「性売買従事者保護法」が出来た。これは性産業従事者に対し仕事をすることを登録したうえで証明書・認証書などを発行し、ワーカーに権利と義務についての情報を提供し、社会保険にも加入できるというものだ。ただ事実上の義務事項となっており、煩雑な手続きの時間と費用はワーカーのみが負担し、事業者は負担しない。関連規制の処罰もワーカーのみが負う仕組みである。これは性産業はあくまでもワーカーが個人事業主でやっているという、日本をはじめ多くの国や地域でみられるタテマエに沿ったものであろうが、結局事業者の責任を免除・免罪するものである。またワーカーを登録し、証明書を発行するというのは、かつてあった「鑑札」でワーカーを管理しようとするものではないか?こうゆうことからも、ドイツは決して性産業の「非犯罪化」をしたわけではなく、あくまでも「合法化(その裏返しの犯罪化)」政策をとっていると言えるだろう。
性産業が「危険」で「ストレスフル」で「健康を害する(望まぬ妊娠等も含む)」リスクが大きいのであれば、それに合わせた特別な規則等を新たに制定し、事業者に守らせる必要がある…これが「非犯罪化」のために必要なのだ。(そしてこういった法や規則づくりに、当事者の声を聞けということである)
ドイツやオランダの事例をみると、そういった規制がほとんどなされないまま「非犯罪化」され、事業者のやりたい放題になっているのが問題なのである。正確なことを言えばセックスワーク論の適用によって状況が悪くなったのではなく、セックスワーク論を口実にして新自由主義のため”換骨奪胎”した適用による失敗なのだ。”労働安全衛生法を守らせる”ためには公的機関の介入が絶対に必要になり、そのため多くのリソースを割かねばならない…新自由主義政策下でそんな余裕はなく、規制緩和は必ず労働条件の悪化に結びつくのである。逆にこれは、新自由主義下では「セックスワーク論」を適用することは出来ず、従ってセックスワーク論者もまた新自由主義と闘わなければならないということでもある。ひゃぁ~大変だ‼
ついでにいうと、ドイツでは2017年に「性売買従事者保護法」が出来た。これは性産業従事者に対し仕事をすることを登録したうえで証明書・認証書などを発行し、ワーカーに権利と義務についての情報を提供し、社会保険にも加入できるというものだ。ただ事実上の義務事項となっており、煩雑な手続きの時間と費用はワーカーのみが負担し、事業者は負担しない。関連規制の処罰もワーカーのみが負う仕組みである。これは性産業はあくまでもワーカーが個人事業主でやっているという、日本をはじめ多くの国や地域でみられるタテマエに沿ったものであろうが、結局事業者の責任を免除・免罪するものである。またワーカーを登録し、証明書を発行するというのは、かつてあった「鑑札」でワーカーを管理しようとするものではないか?こうゆうことからも、ドイツは決して性産業の「非犯罪化」をしたわけではなく、あくまでも「合法化(その裏返しの犯罪化)」政策をとっていると言えるだろう。