超ひさしぶりにX経由で旗旗サイトに行って、面白い論考を見つけてきた。
平和の顔をしたトランプの植民地主義―渋谷要さんの警鐘とウクライナ問題(上)
これは赤いエコロジストという渋谷要氏のブログ記事、トランプ一派【による】米ロ・「帝国主義協商」にNOを!――現代政治条約における「同盟」と「協商」の概念的相違から見えてくるウクライナ「停戦」協議の構図などに触発された米大統領、トランプのウクライナ和平についての批判と歴史的考察である。この和平案については、侵略者(ロシア)に”報酬”を与えるばかりか、ウクライナの領土と資源を米ロで分け合うという、超周回遅れの帝国主義的・植民地主義的分割については、多くの批判が行われている。しかし、この和平案、さらにはトランプ大統領が目指すものの「歴史的な位置づけ」について考察したものである。
旗旗ブログの記事のまんなかあたりに、そのキモがあるので引用する。
「協商(entente)」は国際関係論や特に外交史の中で確立された用語ですが、政治学の世界で使われるニュアンスとしては、トランプがよく口にするディール(取引)はこれに相当するのでしょう。超簡単に言えば「みんなで儲けようぜ!」ということです。ただしそれはお互いに「仲良くする」という意味では全くない。
平和の顔をしたトランプの植民地主義―渋谷要さんの警鐘とウクライナ問題(上)
これは赤いエコロジストという渋谷要氏のブログ記事、トランプ一派【による】米ロ・「帝国主義協商」にNOを!――現代政治条約における「同盟」と「協商」の概念的相違から見えてくるウクライナ「停戦」協議の構図などに触発された米大統領、トランプのウクライナ和平についての批判と歴史的考察である。この和平案については、侵略者(ロシア)に”報酬”を与えるばかりか、ウクライナの領土と資源を米ロで分け合うという、超周回遅れの帝国主義的・植民地主義的分割については、多くの批判が行われている。しかし、この和平案、さらにはトランプ大統領が目指すものの「歴史的な位置づけ」について考察したものである。
旗旗ブログの記事のまんなかあたりに、そのキモがあるので引用する。
「協商(entente)」は国際関係論や特に外交史の中で確立された用語ですが、政治学の世界で使われるニュアンスとしては、トランプがよく口にするディール(取引)はこれに相当するのでしょう。超簡単に言えば「みんなで儲けようぜ!」ということです。ただしそれはお互いに「仲良くする」という意味では全くない。
「協商」とは、複数の国家が相互の利害を調整し、一定の合意のもとで領土や影響圏、資源などを“分け合う”ことを意味します。
これは20世紀初頭から第二次大戦までの国際政治においては、先にあげた独ソ不可侵条約(とその秘密議定書)のほか、英露協商(1907)やサイクス=ピコ協定のように頻繁に行われており、しばしば当事国抜きで “勝手に地図を描き直す” 行為と表裏一体でした。
これは20世紀初頭から第二次大戦までの国際政治においては、先にあげた独ソ不可侵条約(とその秘密議定書)のほか、英露協商(1907)やサイクス=ピコ協定のように頻繁に行われており、しばしば当事国抜きで “勝手に地図を描き直す” 行為と表裏一体でした。
第二次大戦後のアメリカを盟主とする資本主義国家では、こうした協商型の力学は否定され、「多国間協調=ルールに基づく秩序」が重視されてきました。たとえばWTO(国際貿易機関)やG7サミット、NATOなどの諸制度を通じて、国際的な枠組みのなかでの合意形成を行う。これが、主流派帝国主義=グローバリズムの特徴です。
しかし、トランプはこうした「制度」に価値を置きません。
彼が好むのは、制度や枠組み、あるいは自由や民主主義のような人類の普遍的な価値ではなく、個別の“取引(ディール)”によって利害を直接調整する方法――つまり協商です。ゆえにその相手はプーチンや金正恩でも全く問題なく、従来の同盟国の意向を尊重することや、まして同意は必要ないのです。
協商は「同盟(alliance)」ではありません。文書による条約ではなく、一連の「合意」です。お互いへの援助義務はなく、渋谷さんの言葉を借りれば、互いの利益を賭けて行う「政治の打ち合い」です。ゆえにそこには「軍事」は含まれません。トランプは「和平」後のウクライナへの安全保障を拒否し、対して英仏らEUの数か国で停戦監視の派兵が行われようとしています。つまりウクライナ問題では、NATOが分裂して「有志連合」へと後退してしまったと言えます。(以下略)
簡単にいえば、アメリカの世界支配のやり方が、制度や仕組み、価値観などを共有したうえで「多国間協調=ルールに基づく秩序」や「同盟」といったものに依拠するのではなく、「協商」すなわち「みんなで儲けようぜ!」ただしそのために”個別交渉”するからね!になったということなのだ。
そして「みんなで儲け」る中で、アメリカが一番儲かる(得する、利益を得る)ようにする!他の国のことは知ったことか!となる。他の国の主張(主権にかかわるものを含む)や利益も、アメリカと利害の一致する別の国(”ウクライナ和平でいえば、ロシアのことになる)との「協商」の中で無視されることもある。
アメリカによる世界支配は、いわゆるグローバリズムという制度や仕組み、価値観を共有した”協調”体制から、アメリカと取引をする”協商”関係に動いていくと言える。それは資本主義諸国…旧の帝国主義諸国から、BRICSを含む新興の資本主義国(当然、中国ロシアを含む)間の対立と連携を劇化させることになる。旗旗ブログ記事では
しかし今のところ、明確にこの協商路線に立っているのは、ロシアや中国、あるいは北朝鮮などであり、それらは「権威主義国家」などと呼ばれてきました。ゆえに従来の先進諸国のなかでトランプ路線は、渋谷さんの指摘する通り、帝国主義の“反主流派”としての位置取りであり、それは制度や普遍的価値に訴える代わりに、力関係に基づく直接交渉と分割支配によって利益を得ようとする発想です。
と述べている。
少し古い左翼の言葉を使うならば「帝国主義間争闘戦」に、アメリカが「力関係に基づく直接交渉と分割支配によって」、乗り込んでくるということだ。またアメリカという没落帝国主義が、なりふり構わず第二次世界大戦前の”論理”や”倫理”に戻って巻き返しに来るということである。
ではなぜトランプはその路線を取ることにしたのか?アメリカがその路線を取るのか?…旗旗ブログ記事にはそこまで書いていない(下記事がでるようなので、そこで展開される?)が、私が「没落帝国主義」と書いたように、目の前には中国、その他欧州帝国主義やインド他様々な国々の資本主義的発展により、(軍事力や IT産等まだまだ強いところはあるものの)アメリカ帝国主義が相対的に地位を落とし、没落してきたということがその大きな理由である。そしてアメリカの産業や社会が、彼らが掲げた”グローバリズム”によって破壊され、格差が拡大したこと、その格差の是正も”グローバリズム”とそれを支える「新自由主義」という、アメリカ帝国主義を支えてきた仕組みやイデオロギーゆえに不可能であることから、没落を乗り切るためより強権的な、旧来の帝国主義のやり方をしないといけなくなったということでもあろう。(「より強権的な、旧来の帝国主義のやり方」に戻ることは、トランプの内政…移民排斥、反リベラル、パレスチナ連帯運動への弾圧など…についても説明がつく)
このあたりの論考は、まだまだ考察を深めていく必要があると思うが、さしあたって「協調から協商へ」というのは当面のアメリカ、そして世界の動向を読んでいくにあたって注目すべき観点であろう。
協商は「同盟(alliance)」ではありません。文書による条約ではなく、一連の「合意」です。お互いへの援助義務はなく、渋谷さんの言葉を借りれば、互いの利益を賭けて行う「政治の打ち合い」です。ゆえにそこには「軍事」は含まれません。トランプは「和平」後のウクライナへの安全保障を拒否し、対して英仏らEUの数か国で停戦監視の派兵が行われようとしています。つまりウクライナ問題では、NATOが分裂して「有志連合」へと後退してしまったと言えます。(以下略)
簡単にいえば、アメリカの世界支配のやり方が、制度や仕組み、価値観などを共有したうえで「多国間協調=ルールに基づく秩序」や「同盟」といったものに依拠するのではなく、「協商」すなわち「みんなで儲けようぜ!」ただしそのために”個別交渉”するからね!になったということなのだ。
そして「みんなで儲け」る中で、アメリカが一番儲かる(得する、利益を得る)ようにする!他の国のことは知ったことか!となる。他の国の主張(主権にかかわるものを含む)や利益も、アメリカと利害の一致する別の国(”ウクライナ和平でいえば、ロシアのことになる)との「協商」の中で無視されることもある。
アメリカによる世界支配は、いわゆるグローバリズムという制度や仕組み、価値観を共有した”協調”体制から、アメリカと取引をする”協商”関係に動いていくと言える。それは資本主義諸国…旧の帝国主義諸国から、BRICSを含む新興の資本主義国(当然、中国ロシアを含む)間の対立と連携を劇化させることになる。旗旗ブログ記事では
しかし今のところ、明確にこの協商路線に立っているのは、ロシアや中国、あるいは北朝鮮などであり、それらは「権威主義国家」などと呼ばれてきました。ゆえに従来の先進諸国のなかでトランプ路線は、渋谷さんの指摘する通り、帝国主義の“反主流派”としての位置取りであり、それは制度や普遍的価値に訴える代わりに、力関係に基づく直接交渉と分割支配によって利益を得ようとする発想です。
と述べている。
少し古い左翼の言葉を使うならば「帝国主義間争闘戦」に、アメリカが「力関係に基づく直接交渉と分割支配によって」、乗り込んでくるということだ。またアメリカという没落帝国主義が、なりふり構わず第二次世界大戦前の”論理”や”倫理”に戻って巻き返しに来るということである。
ではなぜトランプはその路線を取ることにしたのか?アメリカがその路線を取るのか?…旗旗ブログ記事にはそこまで書いていない(下記事がでるようなので、そこで展開される?)が、私が「没落帝国主義」と書いたように、目の前には中国、その他欧州帝国主義やインド他様々な国々の資本主義的発展により、(軍事力や IT産等まだまだ強いところはあるものの)アメリカ帝国主義が相対的に地位を落とし、没落してきたということがその大きな理由である。そしてアメリカの産業や社会が、彼らが掲げた”グローバリズム”によって破壊され、格差が拡大したこと、その格差の是正も”グローバリズム”とそれを支える「新自由主義」という、アメリカ帝国主義を支えてきた仕組みやイデオロギーゆえに不可能であることから、没落を乗り切るためより強権的な、旧来の帝国主義のやり方をしないといけなくなったということでもあろう。(「より強権的な、旧来の帝国主義のやり方」に戻ることは、トランプの内政…移民排斥、反リベラル、パレスチナ連帯運動への弾圧など…についても説明がつく)
このあたりの論考は、まだまだ考察を深めていく必要があると思うが、さしあたって「協調から協商へ」というのは当面のアメリカ、そして世界の動向を読んでいくにあたって注目すべき観点であろう。