昨日「Go West 」が主催する集会、「かけがえのないものを守るために」に参加してきた。原発事故後、東京から岡山に避難された医師、三田茂さんがリモートでお話しされたことが集会の主題である。三田さんはパワーポイントを作成されてかなり細かいことまで話をされたのであるが、パワーポイント資料はいただけなかったのでメモから重要な点を拾ってみる。
 福島原発事故により放射能被ばくさせられた人のことを、ヒロシマ・ナガサキ、ビキニ、チェルノブィリ、湾岸戦争から引き続く21世紀の「新ヒバクシャ」と三田さんは呼んでいる。その「新ヒバクシャ」に「能力減退症」が見られている、例えば
・記憶力の低下。ものおぼえの悪さ、約束の時間を間違える、メモを取らないと仕事にならない。
・疲れやすさ。仲間についていけない、長く働けない、頑張りがきかない、だるい、疲れると3~4日働けない、昔できていたことができない、怒りっぽく機嫌が悪い、寝不足が続くと発熱する。
・集中力、判断力、理解力の低下。話の飲み込みが悪く嚙み合わない、ミスが多い、面倒くさい、新聞や本が読めない、段取りが悪い、不注意、やる気が出ない、学力低下、頭の回転が落ちた、宿題が終わらない。・コントロールできない眠気。倒れるように寝てしまう、学校から帰り玄関で寝てしまう、昼寝をして気付くと夜になっている、居眠り運転、仕事中に寝てしまうので仕事をやめた。
 このような症状であり、また臨床医として診ていると、疾病が典型的な経過を取らないので診断が困難な症例、身体所見や血液検査のデータ変化が乏しく判断を見誤りやすい症例、治療に対する反応が悪い症例が見られる。病原菌に対する防御力の低下、傷害組織の治癒力の低下、小さなキズの治りが悪い、皮膚炎が治りにくい…これらを含めた多面的「能力」の「減退」―「能力減退症」が事故後3~4年を経て急速に増えていることを感じ、危惧している。
 おそらく脳下垂体や間脳の機能が低下しているのであろう、ステロイド(副腎皮質ホルモン)を投与する、ちょっとしたきっかけの治療で良くなることがある。ある種のホルモンが減少しているようだ。かつての「原爆ぶらぶら病」という呼び方は、症状がはっきりしていない上に「差別語」でもあることから、これを「能力減退症」と呼ぶことにしている。チェルノブイリを知っている専門家から、向うでは子どもが学校へ行けなくなっている、大人が仕事ができなくなっているということを聞いているので、同じことが起こっているのだと思うとのことだそうな。
 一方で福島事故後、子どもの甲状腺がん検査が行われているが、問題なのは「小児甲状腺がん」ではない…チェルノブイリ後、ベラルーシでは小児、乳幼児の甲状腺がんが増えたが、福島事故後に増えた甲状腺がんは、どちらかと言えば15歳から18歳の、青年期にかかる層で増えている。ヒロシマで甲状腺がんは30~40代の病気であった。日本人のヨウ素摂取量は欧米とはケタ違いに大量!であり、この甲状腺がんは放射性ヨウ素の影響ではなく、長い期間原発を運転して、トリチウムや他の放射性物質にさらされてきた影響である。子どもよりも親御さんほうに甲状腺がんが見つかるのだ。
 だが、がんは被爆問題のメインではない!甲状腺がんに拘ることは、ICRP₋IAEA体制の議論の土俵に乗っかるということだ。白血球の減少、白血球像の変化、諸々の自覚症状、感染症のプロフィールの変更、疾病の進行の様子の変化、診断がつきにくく治療の反応が悪くなってきていることなどを分析、議論すべきである。東京首都圏居住者の健康被害は明らかで、福島県の汚染の少ない地域や北関東の住民のそれよりも深刻である。
 公的データから見る日本の現状ということで、2021年1月、セシウム137の月間降下量は福島市で23MBq/㎞2・月、東京では0.63MBq/㎞2・月ある…福島を100とすると、東京は3ある計算だ。(西日本など非汚染地域は不検出)、2020年6月の上水道水では福島市で100とすると、東京では450もある!(これも非汚染地域は不検出)東京の汚染は深刻だ。岡山に避難したのは、岡山に逃げた人の調子がよくなったから、2013~14年ごろに、岡山に避難する流れができた。
 「能力減退症」と名付けたのは、被害者の方から、患者さんのほうから言ってきて欲しい、自分の症状を「こうだ!」と決めつけないで、放射能の影響だと認識して欲しいからだ。被害は膨大な人数に及ぶだろうが、国が対策を取らないのは、ICRPの議論の土俵にぴっぱり込みたいから…この被害を認めると「放射線防護」なんか出来なくなる(すなわち原発や核開発ができなくなるからということ)ということであった。

 集会は、会場から自主避難者の2世である大学生(10年経つと、避難者が連れてきた子どもさんも大人になる)や、リモートで熊本に避難している人、さらには沖縄から内部被ばくの研究で有名な矢ヶ崎克馬さんの発言、さらにはリモート参加者のチャット機能で書かれた意見、感想を読み上げるなどの多彩な発言のあとで幕を閉じた。