2月24日、狭山事件の再審を実現しよう市民のつどいin関西に参加してきた。集会前にカオリンズ、アカリトバリさんの音楽。会場の後ろでは、万円筆を「洗う」実験が行われていた。かもいから見つかった万円筆のインクは、殺された女子高校生の使っていたもの(クロムを含む)とは違うという鑑定結果に対し、検察側は「万年筆のインクを替えた、クロムが検出されないのは洗ったからだ」という主張に対し、実際に洗ってみて、いつまでも前の万年筆のインクがにじみ出てくる…検出されないのは最初から別のインクが使われていた…ということを示すものだ。
 部落解放同盟大阪府連合会書記次長の、袈裟丸朝子さんが地元あいさつ。その後、記念講演の「部落問題の現在から見る狭山事件」と題した、上川多美さんのお話しが始まる。
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 部落問題の現在…というより、その他の差別問題もいっしょに語るお勉強講演会で、大変ためになった!
「知らなくてもしてしまう差別や、知らないからこそできる差別がある」ことをマジョリティ特権やマイクロアグレッションなどの概念を使って説明…ということである。
 差別はたいてい、マジョリティがマイノリティに対し行うものである…旧南アフリカのアパルトヘイトのように、少数の白人が支配のために多数の黒人を制度として差別する場合もあるが、そうした場合数が多くても黒人はマイノリティということになる。法制度や構造で抑圧される側をマイノリティとする…そして、マジョリティに属する人はマイノリティに対し様々な「特権」を持っているのである。
 例えば上川さんは次のような例を挙げられた。
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・乗換案内どおりに電車に乗れる(身体に障害がなく、バリアフリーを気にすることがない)
・名前を聞かれてもドキドキしない(外国人ではない)
・結婚できる(異性愛者である)
・躊躇なくプールや温泉に行ける(トランスジェンダーではない)
・お店にじろじろ見られない(”日本人らしい”姿や服装をしている)
・日本語の映画を観に行ける(聴覚障害がない…聴覚障碍者は字幕やその他の配慮がない映画が観られない)
 日本社会におけるマジョリティであるがゆえに、上記のような「特権」があるということだ。
 またマイノリティへの”配慮”について、マジョリティも実は”配慮”がなされている…ここで、マイクを斬って話をされる。すると会場には声が聞こえなくなる。ただ、隣にいる手話通訳者は手話をつづけることで、手話を知っている人は話を理解することができる…そう、マイクを使うということは、声を聞くことができるマジョリティのための配慮なのだ。聴覚に障害のある人に対しては、手話通訳や要約筆記が配慮にあたるが、マジョリティに対する配慮がマイクで音を大きくするということなのである。それがマジョリティに対して「あたりまえ」に存在する(存在している)から、それに気づくことができない。配慮は常にマジョリティから行われるからでもある。
 マジョリティの「特権」に無自覚なまま、あるいは差別について知らないまま、なにげない言葉や行動でマイノリティを傷つけてしまうこと、それがマイクロアグレッションである。例えば被差別当該者がある人に「部落差別についてどう思うか?」と聞いたときに「それって近畿だけでしょ」「もうなくなったんでしょ」などと答えてしまうことがそれにあたる。知らないことは差別につながるのである。
 そして差別をなくす、あるいは差別構造を変えるためにどうすればよいのか?マイノリティが声を上げる?マイノリティが頑張る?いや、多数の側、マジョリティが変わればすぐに変わる…こちらのほうが簡単だ。
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 マジョリティ特権について知ることになったら、多くの人はそのことにういて申し訳なく思うか、そのまま聞き流すかになるだろうが、大切なことは何もしないでいるこおtが、差別を温存している社会に加担することであり、それは知らないからこそしてしまう差別、知らなくてもできてしまう差別をすることになる。
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 石川一雄さんを逮捕したのは警察だが、それを下支えしたのは部落差別を温存し続けた社会であり、また「犯人逮捕」を強く望んだ社会でもある。再審開始をしないのは裁判所であるが、それを許しているのは無視し続けているマジョリティたち…狭山事件の再審が実現しない問題において、この社会を構成している私たち一人ひとりはマジョリティ側としての当事者であるということだ。

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 記念講演のあとは、司会と部落解放同盟兵庫県連合狭山闘争本部長の山田哲夫さんを交えたトークセッション。もう一人来る予定であったが、スケジュールの都合で来られなくなったそうな。
 続いて冤罪アピール
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 昨年、再審で事件発生から58年を経て無罪が確定した、袴田巌さんの姉、ひで子さんの力強いビデオメッセージ(来場される予定であったが、怪我か何かで来られなくなったそうな)で会場は熱気に包まれた。次は狭山だ!
 東住吉事件の冤罪被害者、青木恵子さんと、湖東記念病院西山美香さんがそれぞれ登壇してアピールを行った。青木さんは冤罪の国賠訴訟が認められず敗訴となったが、新たに事件の原因となったホンダを訴えるそうだ。西山さんの国賠訴訟は今月の20日に結審し、7月17日が判決である。
 休憩をはさんで、和歌山カレー事件の冤罪被害者、林真須美さんの長男さんのビデオメッセージ、それに続いて、石川一雄・石川早智子さんのビデオメッセージである。
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 今、石川一雄さんは体を少し壊していて、このビデオも新年に撮影してYoutubeにアップしたものであり、この集会に向けて作成したものではない。本当に司法は石川さんが弱って亡くなるのを待っているかのようである。そんなことを許してはならない!早急に再審無罪を勝ち取ろう!
 続いて菊池事件の再審を求める弁護団の、徳田靖之さんによる「狭山事件と菊池事件ー冤罪としての共通の構造を探るー」特別アピール。
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 菊池事件はハンセン病に対する差別・隔離政策の中で起きたものである。戦後、日本のハンセン病隔離政策が最も苛烈に展開され、各自治体がハンセン病患者を見つけ、積極的に療養書に隔離していこうと躍起になっていた時期に、村役場の元衛生主任がハンセン病患者を報告したことを恨んでの犯行だとされた。元衛生主任の家にダイナマイトが投げ込まれた事件が起こり、ハンセン病患者のFさんが容疑者として逮捕・起訴され、全面否認しているにもかかわらず熊本地裁が懲役10年の判決を出した。前途を悲観したFさんは拘置所から逃走したのだが、その間に元衛生主任が全身26か所を刺されて殺害される事件が起こった。Fさんは事件発生から6日後に近くの小屋で発見され、逮捕されたが、その際に警察官に発砲され重傷を負った状況でまともな治療も受けられないまま「自白調書」なるものが作成されていた。Fさんはふたたび否認を貫いたが、殺人罪で熊本地裁に起訴され、1953年8月29日に死刑判決が出されたのである。裁判自体がハンセン病隔離施設や、医療刑務所支所の「特別法廷」で行われ、裁判所で公開された法廷で裁判を受ける権利を定めた憲法37条一項に反するものであると同時に、審理において裁判官、検察官、弁護人はいずれも予防儀という白衣を身に着け、手袋をし、あるいは箸で証拠物件を取り扱うという、差別と偏見に満ちた、人としての尊厳を踏みにじったものであった。死刑判決は57年8月23日に確定したが、Fさんは3度に及ぶ再審請求を行い、いずれも棄却されている。3度目の棄却決定は1962年9月13日であるが、その翌日に死刑の執行が行われている。Fさんは療養所で「拘禁」されていたのであるが、療養所内には死刑執行のための施設はない。そのため療養所から「移動する」と言われて拘置所まで連れていかれ、そのまま死刑が執行されるというものであった。
 菊池事件と狭山事件の共通性とは何か?一つは差別、偏見が冤罪を産んだということである。二つ目は捜査機関が致命的な失策を犯していること。菊池事件はFさんが被害者に対し報復行為を行うだろうと、山狩りを行い、徹底的に実家や被害者宅を監視していたにもかかわらず、被害者が殺害されてしまうという事件が起こった。狭山事件では身代金受け渡し場所に多数の警官を張り込ませていたにもかかわらず、犯人を取り逃がしてしまっている。警察の失地回復のため、強引でなりふり構わぬ捜査手法が行われたのである。そして三つ目は、証拠の捏造である。菊池事件では凶器とされた短刀に、指紋も血痕も付着していなかった。狭山事件ではかもいの万年筆である。四つ目は、身内を犯人にするぞという脅しで虚偽の供述が引き出されたことである。菊池事件ではFさんの叔父が別件逮捕されている。狭山事件では、石川一雄さんの兄が犯人ではないかと思い込まされた結果、作られた自白による有罪判決が出ている。
 菊池事件についてより詳しく知ることができたと同時に、差別は人も殺すし、冤罪をうむということがよくわかった。
 議員アピールで、れいわ新選組共同代表、大石あきこ衆議院議員と、社民党副党首の大椿ゆうこ参議院議員から、狭山闘争、石川一雄さんへの思いや、再審法の見直し、議員立法についてのアピールがあった。また手元の資料には、立憲民主党代表代行、辻本清美参議院議員からのメッセージも寄せられていた。
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 アピールの後、カオリンズ、アカリトバリのうた…「真実・事実・現実 あることないこと」、映画「獄友」の主題歌である。兵庫県知事、斎藤元彦やNHK党の立花孝志らがデマ・虚偽の情報をネットに流し、人びとを惑わせている今の状況についても歌われているようであった。
 市民のつどい実行委員会の山中秀俊さんの閉会のあいさつ、続いてポテッカーを掲げて写真撮影タイム。
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 再審法改正 狭山再審
 これを掲げて、パレードと言う名のデモでありますっ‼
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 外はとっても寒い!が、元気よくパレード。
 「袴田さんの再審無罪万歳!次は狭山だ!」
 「狭山事件の再審を勝ち取るぞ!」「今国会での再審法法改正!」「西山さんの国賠訴訟勝利!」…「林真須美さんの再審を勝ち取るぞ!」「菊池事件の再審を勝ち取るぞ!」

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 国道26号を北上し、花園の交差点で右折して南海の高架橋をくぐる…

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 ちょっと行ってから左折して北上…釜ヶ崎の三角公園の隣を過ぎて。

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 新今宮駅前で左折して、その先で解散…皆さま、お疲れさまでした。