イスラエルによるパレスチナ・ガザ攻撃が続いているが、イスラエルを支持する国もまだ多い。ドイツもまたその一つで、未来387号の3面、「戦争国家化進むドイツ・西欧 木戸衛一さん講演 反ミリタリズムの再構築を」には、先月24日に行われた木戸衛一さん講演集会の報告で、次のように書かれている。
 ところが、そのドイツがなぜクライシスに陥ったのか。10・7以降、ドイツは徹底したイスラエル支持とイスラエルへの無制限の連帯を表明した。「イスラエルの安全はドイツの国是」とまで言い切った。戦後ドイツデモクラシーでは、いろんな人、いろんな思想があるのを認め合っているはずなのに、イスラエルを批判しようとすると職場で「あいつはナチだ」とレッテル貼りされる。
先日、国連の停戦決議で日本とドイツは棄権したが、批判のありようは全く逆。ドイツでは「なぜ決議に反対しなかったのか」というトーン。
 市民生活にも影響が出ている。新しい国籍法では取得期間が8年居住から5年に短縮されたが、「イスラエルの生存権を認めること」が条件になっている。
 ドイツのイスラエル軍事援助は23年10月の1カ月で22年の10倍になった。

 なぜ、ナチスのやったことを徹底的に批判し、反省してきたドイツがこのようなことになったのか?ナチスが「ユダヤ人」を迫害、虐殺したから、「ユダヤ人国家」イスラエルを支持せざるを得ない…というものではない。それは、ドイツの批判がナチスの批判で止まっているからに他ならない。同記事で木戸氏はこう続ける。
 植民地主義について考えると、第一次世界大戦に負けて、ドイツは植民地を失った。
それまで、英仏に次ぐ世界第3位の植民地支配大国だった。1904~1908年、ナミビアはドイツ領南西アフリカだった。肥沃な土地を奪われ、牧畜で暮らしていた人びとは耐えきれずに蜂起した。それを中国の義和団事件を弾圧したドイツの将軍がせん滅した。
そこで生まれたのが強制収容所。強制売春もナチスが始める前にナミビアでおこなわれていた。第二次大戦のロシア東部での絶滅戦争の発想も南西アフリカにあった。
 ドイツが主体となった暴力の歴史をドイツ人が知らない。植民地的意識が逆に温存されている

 第一次大戦はアジア、アフリカに広大な植民地を持つ英・仏帝国主義に対し、持たざる帝国主義・ドイツが挑戦するという格好になっているわけだが、ドイツもアジア・アフリカに植民地を持っていた。文中にでてくる「義和団事件」で清国から山東半島の利権を奪い(第一次大戦で日帝がここを攻撃、戦後に利権を引き継ぐ)アフリカ・ナミビアに植民地を持っていた。そこの民衆蜂起を鎮圧し、強制収容所・強制売春を行ったそうだ。
 そうした「帝国主義」「植民地主義」の反省がなされていない、植民地的意識が温存されている…ということなのだ。
 ナチスの侵略・悪行はヨーロッパやロシアが中心であり、そこでの行為については「反省」するが、視点がそこで途切れてしまっている…ということだろう。ヨーロッパ人である「ユダヤ人」の差別・迫害は「反省」するが、ユダヤ人に新しい国をあたえたその先に、パレスチナ人、アジアの人が住んでいるといことには、考えがいたらない、ということだ。だから「帝国主義」「植民地主義」の先兵となって「ユダヤ人国家をつくる」シオニズムを批判できず、イスラエルを支持し、ドイツ国内では警察がパレスチナ連帯デモを認めない。デモを認めても、ジェノサイドを表現すると逮捕される。ドイツ人の中でも、自分はこんな国に住んでいたのかと衝撃を受ける人がいる。(木戸講演)ということになる。

 もちろん、ドイツの不十分さを指摘することで日本帝国主義そして現在の日本が免罪されるわけではない。過去の植民地支配や帝国主義戦争を、本質ではちっとも反省していない日本において、現在「パレスチナ連帯」を掲げる集会やデモ、スタンディングは盛んに行われている。しかし、いざ「台湾有事」「朝鮮半島危機」が起こった時、起こりつつあるときに、中国、朝鮮、韓国人にたいする、相手を抹殺すべくよう働く排外主義に抵抗することができようか?中国、朝鮮に対する戦争に反対することができようか?

 ドイツの問題は、遠く離れたヨーロッパ社会の問題ではなく、私たちの問題でもあるのだ。