斎藤幸平のゼロからの「資本論」(NHK出版新書2023年1月)を読んであちこち飛びながらのんびり解説するコーナー(その1)
 今回は「法学幻想」批判について…
 斎藤氏は5章 グッバイ・レーニン!においてまず
 その際にまず確認しておかなければならないのが、富の豊かさを取り戻すために、マルクスは一貫して、資本主義を超えた社会を構想していたという点です。つまり、資本主義の内部で、単に税金を上げて再分配をしたり、労働者の給料を上げたりするだけではだめだというのです。(p152)
 と切り出し、資本主義を超えた社会を展望しなかればならないと説いている。そして「グッバイ・レーニン!」の章題のとおり、ソ連、中国などの既存の「社会主義」を批判している…こんなものは、マルクスが構想していた「コミュニズム」ではない。民主主義も欠如している。むしろ「政治的資本主義(ブランコ・ミラノヴィッチ)」「国家資本主義」にすぎない。単に生産手段を私有から国有に変えるだけでは、社会主義ではないということだ。
 それではなぜ国有化と社会主義を結び付ける議論が強いのか?それは「政治の力」で達成できるからであり、経済の問題を国家や政治権力の力で解決しようとするのが「国家資本主義」の特徴だからである。そしてこう続ける
 マルクスはその危険性に気がついていました。彼は、表層的な資本主義理解に陥ると、革命や選挙などによって政権を奪取し法律を変えればいいという「法学幻想」が生まれてしまう。と警告しています。ところが現存した「社会主義」は、まさにそのような幻想に陥てしまったのです。(p168)
 と「法学幻想」についての批判に移る…資本(主義社会)と対抗できるアソシエーション…労働組合、協同組合、労働者政党からNPO,NGOまで…の力が弱まると
 マルクスによる「国家資本主義」や「法学幻想」の批判は今日その重要さを増しています。このような幻想は過去に限定される話ではないからです。労働運動が停滞し、アソシエーションが弱まるなかで、国家の強い力を利用した資本主義の改革案が、再び打ち出されるようになっているのです。(p173)
 と続くのだ。
 その「国家の強い力を利用した資本主義の改革案」として、ベーシックインカム(BI)、トマ・ピケティの税制改革案(所得税や法人税、相続税を上げることで大胆な再分配を実現する)、MMTにが掲げる大胆な財政出動「雇用保障プログラム」がやり玉に挙げられている。まぁ、このへんは「真実」だ!
 こういった改革は国家が資本に「大規制」をかけて増税とかを行うことになるが、資本は移動できない国家や労働者を超えて、好きなところで済なものに投資できる。この自由さが資本の権力や優位性の源となっているので、この自由を盾に「資本のストライキ」を起こすことになると斎藤氏は警告する(どういったストライキになるのかは不明)その「資本のストライキ」に打ち勝つためには、アソシエーションを軸とした相当な力の社会運動が必要になる。しかしそういったアソシエーションを作ろうという視点が、BIにも、ピケティにも、MMTにも乏しいと指摘している。
 そして、そのことは偶然ではありません。階級闘争なき時代にトップダウンで行えるような政治的改革が、BIであり、税制改革であり、MMTであるからです。これらは政策や法の議論が先行する「法学幻想」に囚われているのです。
 それに対して、物象化・アソシエーション・階級闘争というマルクス独自の視点をここに導入することは、思考や実践の幅を大きく広げてくれるし、これらの大胆な政策提案を実現するためにも、欠かせない前提条件なのです。(p178)

 と続けているのである。

 こういったことも念頭において、次はアソシエーションに支えられた福祉国家について語ろうと思うぞ。