すごくおしゃれな図書館ができたので行ってみたら、この本があったので借りてきた…目取真俊さん「ヤンバルの深き森と海より」(影書房 2020年1月)
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 芥川賞受賞作家でありながら、沖縄で辺野古新基地建設や高江ヘリパッド建設に反対して体を張って闘っておられる目取真さん…日々の闘いをブログ海鳴りの島からで報告されている。
 その目取真さんが、2006年から2019年まであちこちの媒体、それこそ琉球新報や沖縄タイムスを始め、「思想運動」「越境広場」「けーし風」などのマイナーなものに書かれた評論をまとめた書である。それは2000年代後半からつい最近までの、沖縄の闘い、逆にいえば沖縄が受けてきた差別、抑圧、理不尽な攻撃の足跡である。それなりにずっと沖縄に関わって来た者であっても、これを読むと改めてその理不尽な差別・抑圧が続けられてきたこと、それはひとえにヤマトに住む私たちが解決できなかったことを突き付けられるのだ。
 沖縄の「民意を無視」した辺野古基地建設…と一言でいうが、「民意を無視」して、米軍基地の70%を押し付けているのはヤマトの私たちであるし、多くのヤマトンチュの無関心がそれを支えている。
 
 2000年代後半には、沖縄戦における歴史修正、すなわち「集団自決は軍の命令ではなく、住民が自発的に行ったものだ」とする問題が起こった。それは「大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判」(大江・岩波裁判と略して呼ばれることが多い)として闘われると同時に、小林よしのり「沖縄論」を始めとする右翼論客からの攻撃としても現れた…辺野古や高江の現地でたたかう人たちを貶め、罵声を浴びせ続ける人たちは今でもいるが、そうゆう人たちが公然化したのもこの時期である。そしてそれは対中国シフトのため、南西諸島への自衛隊配備を進めるための、沖縄の人たちが持っている反戦、反軍、反基地の意識をひっくり返すための攻撃でもあったのである。そう「自衛隊配備」は、この時代から始まっていたのだ。
 その後の、普天間飛行場「最低でも県外」から、辺野古に回帰する、「オスプレイ配備」に反対するため、「オール沖縄」の陣形ができる、政権が代わって、仲井真知事が埋立て承認を行い、現地の工事が着手され、ゲート前行動が始まる、翁長知事に代わって、埋め立て工事が一時止まる、高江ヘリパッド建設に、全国から500名もの機動隊が派遣され、暴力をふるう、「土人・シナ人」といった差別発言を浴びせる、辺野古の工事が再開され、護岸か完成する、「県民投票」が行われる…様々なできごと、選挙、たたかいの歴史がつづられている。

 コロナ禍で、沖縄で現地に集ることも、ヤマトから現地に行くことも難しくなる中で、不要不急の工事だけはドンドン進められる。ともすれば絶望、あきらめの気持ちに囚われるかもしれないが、そんな時にこそ、目取真さんのこの本を読み、気力体力活力を奮い立たせたいものである。

 目先の利益に惑わされることなく、名利も求めずに抵抗を続ける民衆ほど、権力者にとって厄介なものはない。それ故にそのような民衆の運動は、権力側の人たちに無視されたり、貶められたりするが、それは民衆の力が彼らを追いつめている証でもある。(p119 アメで歪んだ認識-即座の抗議、大きな意義 沖縄タイムス2011年3月18日 差別の構図/「メア発言」を撃つ より) 
ヤンバルの深き森と海より [ 目取真 俊 ]
ヤンバルの深き森と海より [ 目取真 俊 ]