福島原発事故の汚染水を海洋放出する問題において、主にトリチウムの処理の問題についてある人がこんな提案をしている。曰く、海岸から数十キロ離れた漁場でない海域まで長いパイプを架設し、薄めた「処理水(トリチウム水)」をそこで放出、速やかに希釈して海洋中のトリチウム濃度と同等レベルにすれば良いということだそうな。
トータルで約860兆ベクレル!(あるいは年間で22兆ベクレル)というトリチウム排出量も、太平洋の海水全体に含まれるトリチウム量を増加させるものではないとのことである。
だがこうした考え方が適用される、適用して良いろいうのであれば、どんな毒物も「薄めて太平洋に流せば大丈夫!」ということになりはしないだろうか?様々な毒物、例えばPCBもサリンも、天然の海水中には存在しない。だが検出限界以下まで薄めることは、太平洋の水をもってすれば可能だ!だからそうした毒物も、こっそり太平洋に流せばOK!ということになる。
しかし、どこかの企業なり国家なり、あるいは世界征服を目指す悪の組織⁉なりがPCBを太平洋に流したら、思いきり批難され、ボロクソに叩かれるだろう。罰則を受けるかどうか、そもそも公海上でそれをやったら、誰が罰するのかというのはまた別問題だが、それでも多くの人は海にPCBを流した奴を処罰しろと主張するに違いない。
しかし福島の原発事故処理にあたっては、毒物を環境基準以下に薄め、さらに海で希釈してうやむやにしようとしている…これは一種のモラルハザードではないか!
もちろん、トリチウムを水から集めて分離するのは非常に難しい(技術があることはあるらしいが)ので、原発を運転していれば普段からトリチウム水が出ている。その「環境基準」が日本では6千ベクレル/ℓ以下ということになっている。「処理水」は1500ベクレル/ℓ以下で流す…だが、その「処理水」は実は「汚染水」で、トリチウム以外の核種、セシウム134、セシウム137、ストロンチウム90、ヨウ素129などが基準値を超えて含まれている…そうしてものを一緒くたに「薄めて排出」することなぞ、二重にモラルハザードである!東電を甘やかしてはイケナイのだ!
ところでPCBを薄めて流すには、どのくらいの水(海水)が必要か?
PCBに関する環境法令基準等によれば、PCBの排水基準が0.003㎎/ℓである。3㎎排出するのに1000ℓ、1㎥の水で薄めなければならない。3g処理するなら1,000㎥、10m×10m×10m、質量で千トンの水が必要だ。PCB3グラムを不法投棄する悪の組織は、まず千トンの水を貯えるタンクなりプールなりを作らなければならない。
そして水質環境基準は「検出されないこと」定量下限は0.005㎎/ℓ…排出基準の1/6である…だから排出した水は、直ちに6千トンの水で希釈されなければならない。1円玉3枚分、たった3g処分するのにこれだけ余分に水が必要だ!これは大変なので、悪の組織はPCBをそのままポチョンと太平洋に捨てるだろう、3gだし(悪の組織だったら数十キロあっても直接不法投棄するわ!)
ちなみにPCBは2001年ストックホルム条約により、2028年までPCBを全廃することが決定され、日本においてはPCB廃棄物適正処理の特別措置法によって2027年3月までにPCBを全て廃棄・処理することになっている。高濃度のPCB廃棄物、変圧器や安定機、コンデンサや汚染物は、国の監督のもと運営される中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)の全国5か所のPCB廃棄物処理施設で、地域や品目によって異なるが2026年3月までに、PCBが5000㎎/㎏以下の低濃度PCB廃棄物については、JESCO 以外の認可事業者の処理施設で2027年3月まで処分しなければならない。JESCOの事業には期限があり、それが終了して以降、高濃度PCB廃棄物は実質的に処理できなくなるので、こっそり処理する「悪の組織」が生まれる可能性アリ⁉
おまけ…なんでPCBなんかを例にだしたかというと、1972年(PCB生産中止)までに製造された鋼橋の塗料にPCBが含まれているものがあり、塗り替え塗装時にはがした塗膜がもろに「PCB廃棄物」となるため、ドラム缶に詰めて厳重に保管・管理しなければならなかった…そんなドラム缶が高速道路の橋の下にこっそり保管されていたのである。ただしPCBの処分技術が開発され、またPCB含有量が0.5㎎/㎏以下のものは低濃度PCB廃棄物として扱わないという運用がなされるようになったため、そういった廃棄物も順次、処分されている。ただし塗膜には鉛等の他の有害物質が含まれているため、基本的に有害物質として適切に処分する必要がある。薄めて流したらダメだからね!
トータルで約860兆ベクレル!(あるいは年間で22兆ベクレル)というトリチウム排出量も、太平洋の海水全体に含まれるトリチウム量を増加させるものではないとのことである。
だがこうした考え方が適用される、適用して良いろいうのであれば、どんな毒物も「薄めて太平洋に流せば大丈夫!」ということになりはしないだろうか?様々な毒物、例えばPCBもサリンも、天然の海水中には存在しない。だが検出限界以下まで薄めることは、太平洋の水をもってすれば可能だ!だからそうした毒物も、こっそり太平洋に流せばOK!ということになる。
しかし、どこかの企業なり国家なり、あるいは世界征服を目指す悪の組織⁉なりがPCBを太平洋に流したら、思いきり批難され、ボロクソに叩かれるだろう。罰則を受けるかどうか、そもそも公海上でそれをやったら、誰が罰するのかというのはまた別問題だが、それでも多くの人は海にPCBを流した奴を処罰しろと主張するに違いない。
しかし福島の原発事故処理にあたっては、毒物を環境基準以下に薄め、さらに海で希釈してうやむやにしようとしている…これは一種のモラルハザードではないか!
もちろん、トリチウムを水から集めて分離するのは非常に難しい(技術があることはあるらしいが)ので、原発を運転していれば普段からトリチウム水が出ている。その「環境基準」が日本では6千ベクレル/ℓ以下ということになっている。「処理水」は1500ベクレル/ℓ以下で流す…だが、その「処理水」は実は「汚染水」で、トリチウム以外の核種、セシウム134、セシウム137、ストロンチウム90、ヨウ素129などが基準値を超えて含まれている…そうしてものを一緒くたに「薄めて排出」することなぞ、二重にモラルハザードである!東電を甘やかしてはイケナイのだ!
ところでPCBを薄めて流すには、どのくらいの水(海水)が必要か?
PCBに関する環境法令基準等によれば、PCBの排水基準が0.003㎎/ℓである。3㎎排出するのに1000ℓ、1㎥の水で薄めなければならない。3g処理するなら1,000㎥、10m×10m×10m、質量で千トンの水が必要だ。PCB3グラムを不法投棄する悪の組織は、まず千トンの水を貯えるタンクなりプールなりを作らなければならない。
そして水質環境基準は「検出されないこと」定量下限は0.005㎎/ℓ…排出基準の1/6である…だから排出した水は、直ちに6千トンの水で希釈されなければならない。1円玉3枚分、たった3g処分するのにこれだけ余分に水が必要だ!これは大変なので、悪の組織はPCBをそのままポチョンと太平洋に捨てるだろう、3gだし(悪の組織だったら数十キロあっても直接不法投棄するわ!)
ちなみにPCBは2001年ストックホルム条約により、2028年までPCBを全廃することが決定され、日本においてはPCB廃棄物適正処理の特別措置法によって2027年3月までにPCBを全て廃棄・処理することになっている。高濃度のPCB廃棄物、変圧器や安定機、コンデンサや汚染物は、国の監督のもと運営される中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)の全国5か所のPCB廃棄物処理施設で、地域や品目によって異なるが2026年3月までに、PCBが5000㎎/㎏以下の低濃度PCB廃棄物については、JESCO 以外の認可事業者の処理施設で2027年3月まで処分しなければならない。JESCOの事業には期限があり、それが終了して以降、高濃度PCB廃棄物は実質的に処理できなくなるので、こっそり処理する「悪の組織」が生まれる可能性アリ⁉
おまけ…なんでPCBなんかを例にだしたかというと、1972年(PCB生産中止)までに製造された鋼橋の塗料にPCBが含まれているものがあり、塗り替え塗装時にはがした塗膜がもろに「PCB廃棄物」となるため、ドラム缶に詰めて厳重に保管・管理しなければならなかった…そんなドラム缶が高速道路の橋の下にこっそり保管されていたのである。ただしPCBの処分技術が開発され、またPCB含有量が0.5㎎/㎏以下のものは低濃度PCB廃棄物として扱わないという運用がなされるようになったため、そういった廃棄物も順次、処分されている。ただし塗膜には鉛等の他の有害物質が含まれているため、基本的に有害物質として適切に処分する必要がある。薄めて流したらダメだからね!