鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎を観てきた。【ネタバレ注意】
水木しげる先生の生誕100年を記念してつくられた本作は、水木先生の思想、世界をあまるところなく盛り込んだ素晴らしい作品である!
「鬼太郎」の誕生譚について、知っている人もいるだろうが、最後の「幽霊族」である母親が死んで埋められた土の中から、おぎゃーと生まれた…父親も死んで腐ってしまったが、子を思う気持ちが強く、目玉だけ生き残る。寺の隣に住んでいるしがないサラリーマン水木が、鬼太郎を育てることになる…というもの。
本作はその前日譚であり、アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」第6期のプロローグという位置づけでもある。
本作ででてくるサラリーマン水木は、なかなかかっこいい!「帝国血液銀行」に勤める、野心あふれるサラリーマンだ。もっとも先の大戦での「玉砕部隊」の生き残りという過去をもち…このへんは水木先生の戦争体験や「総員玉砕せよ!」と話がかぶってくる、ここで本作の「水木テイスト」が深みをもってくるのだ…左目の上に刀傷のようなものもある。
水木は野望と密命を帯びて、龍賀一族の当主、時貞の死を弔うため哭倉村に赴く…夜行列車の中はたばこの煙で充満し、子どもがせき込んでいる(つい30年ぐらい前の大昔は、受動喫煙の被害もへったくれもなく、公共の場や職場、家庭内でおおっぴらにタバコを吸ってよい社会だった…水木の勤めるオフィスも煙が充満しているような描写がある…そういえば鬼太郎自身、「墓場鬼太郎」のような初期の作品では子どものくせに?平気でたばこをふかしていた)哭倉村の手前までは、タクシー…なぜか村の入り口のトンネル手前で降ろされるが…トンネルを抜けると、緑豊かで光あふれ、湖の水面がキラキラ光る哭倉村が広がる…すぐ後から始まる、陰惨なストーリーを際立たせる描写だろう。ちなみに結構広い湖、中にはストーリー上重要な「結界」で封印された島もあるようなところは、どこだろう?水木先生の故郷なら山陰だが、山陰、中国山地の山奥に、大きな湖はない。電源開発のために戦後つくられたダム湖でもないようだ。
龍賀家の屋敷は、さすがに立派…トンネルの手前でタクシーが引き返すような山奥にあるとは思えないぐらいの権勢を誇る。そこに通された水木は、あくまでもよそ者だ。屋敷の大広間に一族、関係者が集まる中、次の当主は誰か?時貞の遺言書が読み上げられる。龍賀製薬の社長で、時貞の長女の婿である克典は自分が投手に指名されるであろうことを望んでいた…もちろん、取引先の水木も同様である。だが、指名されたのはずっと人前に出てこなかった、長男の時麿であった!それは孫の時弥が成長し、当主になるまでの「つなぎ」でもあるという…ここから、龍賀家の跡目争いが起こる。
龍賀製薬は、特定の富裕層にのみ、何日間も不眠不休で働ける「血液製剤M]を販売し、富を蓄積していた。先の大戦時に、特攻隊や勤労奉仕員の士気を上げるため覚醒剤(ヒロポン)が使われていいたそうだが、それよりも古い日清、日露戦争時から使われ、日本の発展や、戦後復興の原動力にもなったという設定だ。だがこの血液妻財Mの原材料も、哭倉村でひそかに作られているという…その製法は龍賀製薬の社長、克典さえも知らされていない…水木は克典に取り入るだけでなく、その製法の秘密を探りに来たというわけでもある。
龍賀一族のしきたりでは、当主の葬儀まで一族の者はそれぞれの部屋にこもって身の潔斎を行うのだが、そんな中で一族の者が惨殺される!ここから横溝正史ばりのホラー展開になるのだが、そこに「犯人」の疑いで囚われるのが、鬼太郎の父である。行方不明になった妻の気配があると教えられたので、ここに来たと。村人から惨殺される寸前に、水木が父親を助けることになるが、村長宅の座敷牢で父親を監視することになる…便宜上、水木は彼のことを「ゲゲ郎」と呼ぶようになる…
ここから二人の、血液製剤Mの謎ときおよびゲゲ郎の妻探しの冒険がはじまるのだが、このへんでやめておこう…
それにしても
①ゲゲ郎も幽霊族だから、鬼太郎と同じような能力をもって、人や妖怪とたたかうことができる…このアクションがすごいぞ!
②ゲゲ郎、目玉だけになる前から、風呂が好き!
③幽霊族の地を人間に輸血すると、人間は生きながら死体となる…という重要設定もそのままキープ…バラすと、この死体人間から血液製剤Mを作ったいるらしい。また死体人間をつくるために、幽霊族の血もまた集められていた…これが、龍賀一族の権勢と因習の”秘密”でもあった。
③当初、自らの野心と出世…それは戦争で全てを失い、また戦争から帰ったら待ていた母親も悪い奴らに騙されて全てを失っていたことからの反動なのだが…それのみで動いていた水木が、ゲゲ郎との付き合いで「見えないもの(妖怪たち)」が見えるようになり、変わっていくのが定番のだいご味…ゲゲ郎が捉えられ、絶体絶命のピンチに陥った時、水木は時貞の孫娘、紗代をつれてトンネルを抜けようとしていたのだが、ゲゲ郎を助けるために引き返すのだ!
④いつものあの男は、ずっと前からゲゲ郎とはお知り合い…今回は裏切らなくてよかったね。
⑤結局、ラスボスを倒し、血液製剤Mもこれ以上作れなくなるわけだが、これは「戦前・戦後を貫く闇」を倒したというより、誰かの犠牲…この場合は滅ぼされる幽霊族や、死体人間とされた村人…の上に立つ繫栄や発展を拒否するという、ゲゲ郎や鬼太郎、さらには水木先生(もっとも水木先生はそこまで深刻に考えていないだろうな)の生き方が反映されたものだろう。
⑥それにしても、幽霊族の死体から血を吸って咲き誇る桜の赤いこと、きれいなこと…
⑦でも結局、ゲゲ郎の妻の死体がいつ埋められて鬼太郎が誕生したのか?ゲゲ郎がなんで目玉だけ残っって生きているのかは、謎のまま…生まれるこどもの生きる世界をみたみたいぞ!だけではわからんぞ?
ではでは…
水木しげる先生の生誕100年を記念してつくられた本作は、水木先生の思想、世界をあまるところなく盛り込んだ素晴らしい作品である!
「鬼太郎」の誕生譚について、知っている人もいるだろうが、最後の「幽霊族」である母親が死んで埋められた土の中から、おぎゃーと生まれた…父親も死んで腐ってしまったが、子を思う気持ちが強く、目玉だけ生き残る。寺の隣に住んでいるしがないサラリーマン水木が、鬼太郎を育てることになる…というもの。
本作はその前日譚であり、アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」第6期のプロローグという位置づけでもある。
本作ででてくるサラリーマン水木は、なかなかかっこいい!「帝国血液銀行」に勤める、野心あふれるサラリーマンだ。もっとも先の大戦での「玉砕部隊」の生き残りという過去をもち…このへんは水木先生の戦争体験や「総員玉砕せよ!」と話がかぶってくる、ここで本作の「水木テイスト」が深みをもってくるのだ…左目の上に刀傷のようなものもある。
水木は野望と密命を帯びて、龍賀一族の当主、時貞の死を弔うため哭倉村に赴く…夜行列車の中はたばこの煙で充満し、子どもがせき込んでいる(つい30年ぐらい前の大昔は、受動喫煙の被害もへったくれもなく、公共の場や職場、家庭内でおおっぴらにタバコを吸ってよい社会だった…水木の勤めるオフィスも煙が充満しているような描写がある…そういえば鬼太郎自身、「墓場鬼太郎」のような初期の作品では子どものくせに?平気でたばこをふかしていた)哭倉村の手前までは、タクシー…なぜか村の入り口のトンネル手前で降ろされるが…トンネルを抜けると、緑豊かで光あふれ、湖の水面がキラキラ光る哭倉村が広がる…すぐ後から始まる、陰惨なストーリーを際立たせる描写だろう。ちなみに結構広い湖、中にはストーリー上重要な「結界」で封印された島もあるようなところは、どこだろう?水木先生の故郷なら山陰だが、山陰、中国山地の山奥に、大きな湖はない。電源開発のために戦後つくられたダム湖でもないようだ。
龍賀家の屋敷は、さすがに立派…トンネルの手前でタクシーが引き返すような山奥にあるとは思えないぐらいの権勢を誇る。そこに通された水木は、あくまでもよそ者だ。屋敷の大広間に一族、関係者が集まる中、次の当主は誰か?時貞の遺言書が読み上げられる。龍賀製薬の社長で、時貞の長女の婿である克典は自分が投手に指名されるであろうことを望んでいた…もちろん、取引先の水木も同様である。だが、指名されたのはずっと人前に出てこなかった、長男の時麿であった!それは孫の時弥が成長し、当主になるまでの「つなぎ」でもあるという…ここから、龍賀家の跡目争いが起こる。
龍賀製薬は、特定の富裕層にのみ、何日間も不眠不休で働ける「血液製剤M]を販売し、富を蓄積していた。先の大戦時に、特攻隊や勤労奉仕員の士気を上げるため覚醒剤(ヒロポン)が使われていいたそうだが、それよりも古い日清、日露戦争時から使われ、日本の発展や、戦後復興の原動力にもなったという設定だ。だがこの血液妻財Mの原材料も、哭倉村でひそかに作られているという…その製法は龍賀製薬の社長、克典さえも知らされていない…水木は克典に取り入るだけでなく、その製法の秘密を探りに来たというわけでもある。
龍賀一族のしきたりでは、当主の葬儀まで一族の者はそれぞれの部屋にこもって身の潔斎を行うのだが、そんな中で一族の者が惨殺される!ここから横溝正史ばりのホラー展開になるのだが、そこに「犯人」の疑いで囚われるのが、鬼太郎の父である。行方不明になった妻の気配があると教えられたので、ここに来たと。村人から惨殺される寸前に、水木が父親を助けることになるが、村長宅の座敷牢で父親を監視することになる…便宜上、水木は彼のことを「ゲゲ郎」と呼ぶようになる…
ここから二人の、血液製剤Mの謎ときおよびゲゲ郎の妻探しの冒険がはじまるのだが、このへんでやめておこう…
それにしても
①ゲゲ郎も幽霊族だから、鬼太郎と同じような能力をもって、人や妖怪とたたかうことができる…このアクションがすごいぞ!
②ゲゲ郎、目玉だけになる前から、風呂が好き!
③幽霊族の地を人間に輸血すると、人間は生きながら死体となる…という重要設定もそのままキープ…バラすと、この死体人間から血液製剤Mを作ったいるらしい。また死体人間をつくるために、幽霊族の血もまた集められていた…これが、龍賀一族の権勢と因習の”秘密”でもあった。
③当初、自らの野心と出世…それは戦争で全てを失い、また戦争から帰ったら待ていた母親も悪い奴らに騙されて全てを失っていたことからの反動なのだが…それのみで動いていた水木が、ゲゲ郎との付き合いで「見えないもの(妖怪たち)」が見えるようになり、変わっていくのが定番のだいご味…ゲゲ郎が捉えられ、絶体絶命のピンチに陥った時、水木は時貞の孫娘、紗代をつれてトンネルを抜けようとしていたのだが、ゲゲ郎を助けるために引き返すのだ!
④いつものあの男は、ずっと前からゲゲ郎とはお知り合い…今回は裏切らなくてよかったね。
⑤結局、ラスボスを倒し、血液製剤Mもこれ以上作れなくなるわけだが、これは「戦前・戦後を貫く闇」を倒したというより、誰かの犠牲…この場合は滅ぼされる幽霊族や、死体人間とされた村人…の上に立つ繫栄や発展を拒否するという、ゲゲ郎や鬼太郎、さらには水木先生(もっとも水木先生はそこまで深刻に考えていないだろうな)の生き方が反映されたものだろう。
⑥それにしても、幽霊族の死体から血を吸って咲き誇る桜の赤いこと、きれいなこと…
⑦でも結局、ゲゲ郎の妻の死体がいつ埋められて鬼太郎が誕生したのか?ゲゲ郎がなんで目玉だけ残っって生きているのかは、謎のまま…生まれるこどもの生きる世界をみたみたいぞ!だけではわからんぞ?
ではでは…