10月3日、和歌山市の紀ノ川にかかる六十谷水管橋が崩落し、川の北側、約6万世帯で断水が続いている。本日の報道で、崩落の原因とみられる事実が明らかになった。読売新聞オンラインより
崩落の水道橋と水道管つなぐ「つり材」、4本が腐食し破断…5月の点検では確認できず
 和歌山市を流れる紀の川にかかる水道橋「 六十谷むそた 水管橋」(全長約550メートル)の一部が崩落し、市北部の約6万世帯(約13万8000人)が断水している問題で、尾花正啓市長は6日、橋のアーチと水道管をつなぐ「つり材」4本が腐食、破断しているのを確認したと明らかにした。市は、つり材の腐食が崩落につながった可能性が高いとみている。
 水道橋は1975年3月に完成。直径約90センチの水道管が2本通り、それぞれの水道管と橋のアーチ部分を多数の鉄製つり材がつなぐ構造になっている。
 市が6日、橋をドローンで撮影して調べたところ、中央付近の崩落部分(約60メートル)の北側にあるつり材4本で、水道管から約3・5メートル上部に腐食と破断が見つかった。いずれも鳥のフンや雨水などがたまりやすい部分だという。市は崩落部分のつり材でも破断が生じ、水道管を支えきれなくなった可能性が高いとみている。
 市は年に1度、水道管の目視点検を実施している。今年5月の点検では全体的に腐食が進んでいることを確認したが、緊急性はないと判断し、来年度に修繕に向けた予算を計上する予定だった。点検で破断は確認されなかったという。
 2015年度に行った耐震化工事では、金具やワイヤで水道管を補強。つり材を補強する部品の一部も交換したが、つり材そのものは交換しなかった。
 尾花市長は「腐食の原因が何であれ、老朽化だと思う。人の通る橋に比べて点検が甘かった」と説明した。今後も専門家を交えた調査を継続し、原因究明にあたる。
 各地の水道橋を手がける水島鉄工(新潟県)の水島等・専務取締役は「強い雨風などで受けた小さな傷を見つけきれず腐食が進み、破断した可能性が考えられる。点検では漏水がないよう水道管ばかりに目がいきがちだが、橋全体に目を配ることが必要だ」と指摘する。

 リンクには「つり材」の腐食、破断状況が確認できる写真もある。また和歌山市から提供されている、ドローンで撮影した動画でもそれは確認できる。5月の点検はどのようにしたのかということは書かれていないが、別の報道では平行する道路橋から目視点検をしたとある。しかし双眼鏡とかを使っても、錆が酷いことまでは分かるものの「破断」まで確認できたかどうかは不明だ。仮に水道管のあるところから点検しても、空中の高い位置にある部材をきちんと目視で点検することは難しい。

 さて、国土交通省では2014年に道路法施行規則を改正し、次のように運用している(道路の維持修繕に関する省令・告示の制定について(道路法施行規則の一部改正等)pdf
  トンネル、橋その他道路を構成する施設若しくは工作物又は道路の附属物のうち、損傷、腐食その他の劣化その他の異状が生じた場合に道路の構造又は交通に大きな支障を及ぼすおそれがあるもの(以下この条において「トンネル等」という。)の点検は、トンネル等の点検を適正に行うために必要な知識及び技能を有する者が行うこととし、近接目視により、五年に一回の頻度で行うことを基本とすること。
 これは2012年12月の中央自動車道、笹子トンネル天井版落下事故なんかを契機に定められたもので、すべての道路橋やトンネルは5年に1度の割合で「近接目視」すなわち技術者が近づいて目視、場合によっては触ったり叩いたりしてきちんと点検しましょう、記録して評価し、悪い箇所は補修しましょうということを法的に決め、そして国道や高速道路会社が管理する道路のみならず、都道府県市町村の自治体が管理する道路も同様に取り扱うようにしたのだ。
 各自治体も、それこそ財政基盤がどのような状態であれ、予算を確保して5年に1回の頻度の目視点検を行わなければならなくなった。仮に自治体が1000橋の道路橋を管理しているのであれば、1年間に200橋ずつ順番に点検を行い、5年で1周、すなわち全橋点検を終了しておく必要がある。2019年にはすべての橋やトンネルの点検が終わっているハズであり、逆に未点検のものがあれば法令違反となるわけだ。(ちなみに私はこういった業務とかでメシを食っている)
 一口に「近接目視」点検といっても、長い橋、高い橋、水上にある橋は大変で、足場をかけたり通行止めにして橋梁点検車を使ったりと手間とカネがかかる。最近はロープワークと言って、ロッククライミングのように人がロープにつかまって橋梁を点検したり、ドローンを使ったりする点検も行われている(ドローンで写真や動画を撮影することが「近接目視」になるのか?という問題もある)
 今回は市の企業局が所有する水道管橋ということで、道路法の規制からははずれる。水道の職員さんだと、どうしても漏水等の問題に目を奪われがちで、橋の構造まで目が行き届かなかったのではということも言える。ただ2015年に耐震化工事を行っているということだから、この時にきちんと橋梁のことが分かる技術者が現場を見ていれば、破断箇所の腐食状況は判断できたはずだ。おそらく塗膜の下の鉄がボロボロに錆び、膨れ、層状にめくれ上がっていたのではないだろうか。「腐食が急激に進んだ」という証言もあるが、破断につながる腐食が1,2年で進行することは考えずらい。おそらくかなり前から鉄が膨張する腐食が進んでいたのだと思う。

 ちなみに2007年には、三重県の国道23号線、木津川橋のトラス橋の部材は破断するという事故が起こっている。(土木学会誌の関連記事pdf)リンクの記事中にも、「5年に一度の定期点検が、1年半ほど前に行われた」とある。主要な国道や高速道路などは、以前から定期点検は行われていたのであるが、それでも盲点となった部分で破断・破損を見つけることが出来なかった。2007年にはアメリカでトラス橋が崩落し、秋田の本庄大橋の斜材も破損が発見されている。点検の重要性が認識されたにもかかわらず、2012年には笹子トンネルの事故も起こっている。にもかかわらず、点検の不備で同じような事故が起こっている…今回の崩落では直接、人命の犠牲は起こらなかったが、大勢の人が長期間の断水に苦しむということになっている。
 点検などのインフラ維持管理をケチっては絶対にイカんのだ!ましてや営利に委ねる水道の民営化などとんでもない!ということも、今回の事故の教訓なのである!